4 ペア・パワー・オーバー・イーサネット (PoE)

4 ペアー・パワー・オーバー・イーサネット(PoE)の概要

VoIP 電話やセキュリティ・カメラなど、さまざまな機器に電力を供給するために、ここ数年間、パワー・オーバー・イーサネット (PoE) に対応したケーブル配線システムが展開されています。これまでは最大 30 W への対応が要求されていましたが、現在は、最新の 802.11ac Wi-Fi アクセス・ポイントやデジタル表示、そしてデスクトップ・コンピューターも高電力レベルの PoE を活用できるようになったため、顧客は、これらの多様な機器に電力を供給できる 4 ペア PoE を求め始めています。この記事では、規格案、配線要件、LP ケーブル配線認定、および現場で成端されたプラグの 4 つの PoE 関連トピックに関する最新情報を提供します。

 

このページに記載されていること

 

4 ペア・パワー・オーバー・イーサネット (PoE) とケーブル配線システム

VoIP 電話やセキュリティ・カメラなど、さまざまな機器に電力を供給するために、ここ数年間、パワー・オーバー・イーサネット (PoE) に対応したケーブル配線システムが展開されています。これまでは最大 30 W への対応が要求されていましたが、現在は、最新の 802.11ac Wi-Fi アクセス・ポイントやデジタル表示、そしてデスクトップ・コンピューターも高電力レベルの PoE を活用できるようになったため、顧客は、これらの多様な機器に電力を供給できる 4 ペア PoE を求め始めています。この記事では、規格案、配線要件、LP ケーブル配線認定、および現場で成端されたプラグの 4 つの PoE 関連トピックに関する最新情報を提供します。

規格

まず、既存の PoE タイプの違いから説明します。タイプ 1 PoE は最大 15.4 W の電力を供給し、機器ではそのうち 13 W を使用できます。タイプ 2 PoE(PoE Plus とも呼ばれます)は最大 30 W の電力を供給し、機器ではそのうち 25.5 W を使用できます。両タイプとも 2 つの方式(オルタナティブ A と オルタナティブ B)を使って 2 ペアを介して給電を行います。

オルタナティブ A では、1-2 ペアと 3-6 ペアを使ってデータと同時に電力が送信されます。オルタナティブ B では、使用されていない 4-5 ペアと 7-8 ペアを使って電力が送信されます。オルタナティブ A は、2 ペア(10/100BASE-T など)と 4 ペア(1000BASE-T など)アプリケーションの両方に対応し、オルタナティブ B は、2 ペアを使用するデータ信号のみに対応しています。

802.3bt 規格では、4ペア PoE に Type 3 と Type 4 のどちらも含まれ、4 ペアすべてを使用してデータと一緒に電力が送信されます。タイプ 3 PoE は最大 60W の電力を送信し、機器ではそのうち 51W を使用でき、タイプ 4 は最大 90W の電力を送信し、機器ではそのうち 71W を使用できます。

イーサネット・アライアンス 認証プログラム

相互動作性を強化するために、イーサネット・アライアンス(PSE スイッチ機器の 90% を提供するメーカーが参加するコンソーシアム)は、PoE 認証プログラムを発表しました。このプログラムは、Ethernet Alliance 参加メーカーの製品と IEEE-802.3 に基づいたその他の PoE 対応製品の相互動作性を認証する方法を提供し、認証された製品にはラベルが付けられます。

製品の認証は、承認済みの機器を使用した 300 ページにわたるテスト計画によって定義されます。これは、メーカー、または University of New Hampshire’s Interoperability Laboratory (UNH-IOL) などの第三者機関によって行われ、PSE および PD 両方の機器が認証されます。この厳格なプロセスに合格した機器には、下に示す EA 承認マークのラベルが付けられます。

設計者や PoE 機器の設置業者は、PSE と PD に付けられたマークを比較するだけで適合性を確認できます。PSE の定格が PD の要件以上の場合は機能性が保証されます。

受電機器と給電機器の Ethernet Alliance マーク

受電機器(左)と給電機器(右)の Ethernet Alliance マーク。

 

配線要件

オルタナティブ A を用いるタイプ 1 とタイプ 2 PoE では、2 ペアにコモン・モード電圧を印加することで電力を供給し、電流は 2 つの導体に均一に分割されます。これを実現するには、ペアの各導体の DC 抵抗のバランスが取れていなければなりません(等しくなければなりません)。差は DC 抵抗アンバランスと呼ばれます。アンバランスが大きいと、イーサネットのデータ信号に歪みが発生し、ビット・エラー、再送信の原因となり、データ・リンクが切れることもあります。

タイプ 1 とタイプ 2 PoE オルタナティブ A と同様、4 ペアーのタイプ 3 とタイプ 4 PoE もコモン・モード電圧を使って電力を送信するため、DC 抵抗アンバランスが重要になります。ただし、タイプ 3 とタイプ 4 では、各ペアの DC 抵抗アンバランス以外にも考慮しなければならないことがあります。複数のペアーで過度の DC 抵抗アンバランスが発生すると、データ伝送に悪影響を与え、PoE が機能しなくなる可能性があります。

導体径と同軸度(真円度)にばらつきのある低品質ケーブルを使用すると、DC 抵抗アンバランスのリスクが高くなりますが、各導体が IDC 内に適切に装着されておらず、終端処理に一貫性がない場合も DC 抵抗アンバランスが発生する可能性があります。ベンダーのケーブルには DC 抵抗アンバランスの仕様が記載されていることもありますが、DC 抵抗アンバランス性能を確認するには、敷設後に現場試験を必ず行う必要があります。

DSX ケーブルアナライザー™ シリーズを使うと、ペアー内とペアー間の DC 抵抗アンバランスを素早くテストできるため、敷設するケーブル・システムが 2 ペアーおよび 4 ペアー PoE アプリケーションに対応することを確認できます。

 

温度上昇および Limited Power ケーブル

残念ながら、考慮する必要があるのは DC 抵抗アンバランスだけではありません。PoE にツイスト・ペア・メタル線ケーブルが使用されている場合、ケーブル内の温度の上昇によって挿入損失が大きくなることがあります。これにより、挿入損失試験でチャネルが不合格となったり、短いケーブルを使用しなければならなくなる可能性があります。

PoE に使用する複数のケーブルを 1 つにきつく束ねた場合は特に、熱の発生が問題になります。電力が高いほど、大きな熱が発生します。米国電気工事規程では、60W 以上の PoE に関して、導体サイズと温度定格に基づいて、束にすることのできるケーブルの数を規定しています。TIA も、束ねられたケーブルの温度上昇を制限するためのガイドラインを現在策定中です。

束ねられたケーブルに高い PoE 電力レベルを流した場合の影響について事実調査を行った結果、Underwriter’s Laboratories (UL) は PoE 用途におけるケーブルの選定を簡素化するために Limited Power (LP) 認証を導入しました。LP 認証は、最悪な敷設環境において、ケーブルの温度定格を超えることなく、PoE 電力を届けることができることをテストしていることを示します。認証は、大きなバンドル・サイズ、高い周囲温度、および閉ざされた空間や導管などのその他の環境的な影響を考慮します。

LP は認証であり、リスティングやレーティングではないことを理解することが重要です。したがって、米国電気工事規程(NEC®)の NFPA 70 で求められる他の UL リスティング、プレナム、ライザーなどの格付け評価とは異なり、LP 認証ケーブルは任意のものであり、必須要件ではありません。NEC® といえば、2017 年版では、温度上昇問題に対処するための新しい要件が盛り込まれています。ただし、電力が 60 W(タイプ 3)を超える場合のみを対象としています。NEC には、周囲温度が 30°C (86°F) の環境に敷設される特定のケーブル・バンドル・サイズ、導体径、定格温度のケーブルで許容される最大電流容量を記載した電流容量表があります。NEC® は法律であるため、これらで電流容量表に従わなければなりません。ただし、NEC は電流容量表の代わりに、LP 認証ケーブルを使用することを認めています。

朗報なのは、PoE による電源供給が 60W 以内であれば、この問題を心配する必要がないことです。ほとんどの PoE 対応デバイスは、LED ライトも含め、60W を超える電力を必要としません。その一方で、ケーブルを通してどれだけの電力が供給されるのかは実際に分からないため、将来に備えて、電流容量表に従うか、LP 認証ケーブルを使用するのが最善です。他にも、導体直径が大きい、定格温度が高い、またはシールド構造になっているケーブルを使用したり、ケーブル・バンドルを使用しない選択肢もあります。

直流抵抗不平衡は、より高い温度定格または LP 認証を持つ高品質なケーブルでは一般的に問題にはなりませんが、製品の不出来によって抵抗不平衡が大きくなりすぎる可能性があります。したがって、LP ケーブル配線の DC 抵抗をテストすることが推奨されます。

モジュラー・プラグ成端リンク

モジュラー・プラグ終端リンクの天井裏空間の使用例モノのインターネット (IoT) とセンサー技術の発展により、多くの IP 対応デバイスがメタル線の水平配線インフラに接続されています。LED ライト、防犯カメラ、ビル自動化制御など、このようなほとんどのデバイスと Wi-Fi アクセス・ポイントは、ネットワークに接続するために RJ45 ポートを備え統合化がなされています。

こういった種類のデバイス(特に、フェース・プレートの取り付けに向かない天井に設置されるデバイス)を接続する際、一般的な 4 コネクター・チャネルを使用しない場合があります。代わりに、通信室では 1 本のパッチ・コードのみが使用され、片端をプラグで成端したパーマネント・リンクはデバイスに直接接続できるため、機器コードが基本的に不要になります。これにより、現在モジュラー・プラグ成端リンクまたは MPTL と呼ばれるリンクが構築されています。このアプリケーションは一般的に使用されるようになってきており、ドラフトとして規格化もなされているため、テスト方法を理解しておく必要があります。

プラグ成端リンクを使用すると、パッチ・コードが不要になるため、間違ってコードを引き抜いてしまうという事故も無くなり、セキュリテーが向上し、見た目もすっきりします。また、空調スペースに難燃性のプレナム定格製品のみを敷設するというコード要件を確実に守ることもできます(パッチ・コードにはプレナム定格でないものもあります)。

プラグで成端し、機器コードの必要性をなくすリンクの使用は、「BICSI 005 Electronic Safety and Security standard(電子的な安全とセキュリテー)」に関する規格で初めて提起され、また今年後半に策定される予定の「BICSI 033 Information Communication Technology Design and Implementation Practices for Intelligent Buildings and Premises(インテリジェント・ビルディング/構内のための情報通信技術の設計および実装に関する実施例)」にも盛り込まれます。「TIA-862 Building Automation Standard(ビル自動化規格)」では、使用不可能または安全でないと判断された場合は機器コードを排除する必要があることが認識され、プラグ成端リンクの使用が明確に許可されています。このアプリケーションは当初「ダイレクト・アタッチ接続」と呼ばれていましたが、データセンターのスイッチ・サーバー間アプリケーションで使われるダイレクト・アタッチ接続と区別するために、異なる用語が使用されるようになりました。

片端がプラグによって成端されたリンクは業界規格によってアプリケーションとして認められていますが、これまで TIA によって定められたテスト要件はありませんでした。このため BICSI の推奨通り、当初これらの接続はモディファイド・シングル・コネクター・パーマネント・リンクを使ってテストされていました。これは、パッチ・パネル側のメイン・テスト・ユニットをパーマネント・リンク・アダプターに、遠端側のリモート・ユニットをチャネル・アダプターにそれぞれ取り付け、テスターで「Mod 1-Conn Perm. Link」を選択する方法で行われました。しかし遠端側でチャネル・アダプターを使用すると、遠端側の嵌合された接続がテストに含まれないという問題があります。

現場で成端されたプラグの使用が増え、成端部の品質が低下する可能性が高くなったため、標準化団体は遠端側の最終プラグ接続を含めた新たなテスト手順の必要性を認識するようになりました。現在の ANSI-TIA568.2-D ドラフト規格には MPTL 構成が含まれており、このテストはすでに DSX ケーブルアナライザー・シリーズに統合されています。

インストールツール

フルーク・ネットワークス MicroScanner PoE テスター適切に認証された配線設備においても、PoE を設置する技術者はさまざまな問題に直面します。 原因は、ケーブルのラベル表記の誤り、破損、間違ったポートへの接続、または完全な断線である可能性もあります。他にも、スイッチが適切に構成されておらず、十分な電力が供給できていないなどの原因も考えられます。技術者がワイヤー上の機器を正確に把握できない場合、こういった問題のトラブルシューティングに非常に多くの時間がかかります。 ワイヤーをトレースして、異常のないこと、そしてどこに接続されているかを確認しなければなりません。 しかし、たとえそれを確認できたとしても、スイッチを見ただけでは電力が正しく構成されているかどうかを判断することはできないため、 IT 担当者に連絡して調査する必要があります。

フルーク・ネットワークスは、これらの問題を解決し、技術的なフラストレーションを軽減するために、次の 2 つのツールを開発しました。LinkIQ™ ケーブル + ネットワーク・テスター および MicroScanner™ PoE。いずれかのツールをケーブルに接続するだけで、PSE に接続されている場合は、リンクで使用可能な電力のクラス(0~8)が表示されます。技術者はこの結果を PD の要件と比較することで、十分な電力を供給できるかどうかを確認できます。LinkIQ は、PSE に負荷をかけてさらにテストすることで、スイッチとケーブル・リンクが表示電力を供給できるかどうかを判定します。MicroScanner™ PoE は、イーサネット・アライアンス Gen2 PoE 認定プログラム・テスト・プランを正常に完了済みであり、すべての IEEE 準拠デバイスで正しく動作することを保証します。このテスターは、IEEE に準拠していないさまざまなテクノロジーでも動作するようにも設計されていますが、対応する認証プログラムがないため、弊社の表明を信用してください。

これらのテスターは、他の多くの面でも技術者にとって非常に貴重です。最大 10Gbps のポート速度を特定します。通信速度の遅いポートによって、アクセス・ポイントやカメラの性能が制限されることがあります。ケーブルが損傷している場合は、各ペアの長さ、破損の可能性、またはその他の障害が表示されます。また、ケーブルのプラグを抜かれたり、配線を間違えたりすることもあります。そのため、テスターはケーブルをトレースするためのトーン・ソースとしても機能できます。識別装置を離れたケーブルに接続することで、ケーブル経路を特定できます。LinkIQ には、次のような追加機能があります。接続されているスイッチの名前、ポート、および VLAN 番号を表示する、最大 10Gb/秒 のケーブル接続のパフォーマンスの特性評価。最後に、LinkIQ はケーブル配線またはスイッチのレポートを生成し、人気のある LinkWare™ PC ソフトウェアを使用して保存または印刷できます。

適切な機器の選択、ケーブル能力の認証、技術者による敷設の確認とトラブルシューティングによって、 PoE プロジェクトを良好に進めることができます。

LinkIQ ケーブル+ネットワーク・テスター

LinkIQ ケーブル+ネットワーク・テスター

 

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