ホワイトペーパー

より良いファイバー測定を行うための時間を減らそう

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概要

米国電気通信産業協会は、TIA 568.3-D において、ケーブル配線規格への適合性を認証するだけでなく、周辺コンポーネントを特定することで配線の質を最適化する 2 段階の認証プロセスを定義しています。ANSI/TIA 568.3-D は、「ティア 1」と「ティア 2」の用語を使う一方で、IEC 14763-3 は「ベーシック」と「拡張」テスト・グループの用語を使います。

  • ティア 1 / ベーシック・テストは、チャネル/パーマネント・リンク全体のパフォーマンスを測定し、光源とパワー・メーター(LSPM)または自動化された光損失測定試験セット(OLTS)が使用されます。
  • ティア 2 / 拡張テストでは、チャンネル内のコンポーネントを評価する測定が加えられ、光パルス試験器(OTDR)が用いられます。

 

ティア 2 は、非常に単純な理由でティア 1 を補完します。それは、ティア 2 はティア 1 よりも詳細度に優っているものの、正確度に劣るためです。これは、はじめは矛盾しているように聞こえますが、技術的な基本原理に基づいていることであり、過去および将来の OTDR モデルにも言えることです。実際、OTDR は正確な測定を行えますが、これを行うためには、複雑過ぎるために避けられることが多い適切な手法を使わなければなりません。このホワイトペーパーでは、正確性と再現性がより優れた結果を届け、それと同時に全体の試験時間を大幅に短縮させる新しい手法と手順を紹介します。

OTDR には視点がある

では、今日の代表的な OTDR テストの各種シナリオを説明します。コネクターやスプライスなどの個々のイベントの損失に加え、全体のリンク損失の測定方法は、測定をどの方向から実施するかによって異なります。これはウィキペディアに載っている言葉ではありませんが、ここでは「指向性」と呼ぶことにします。

「指向性」は、テスト対象リンクに加え、ランチ・ファイバーとテール・ファイバーの直径、後方散乱、開口数、屈折率の違いによって生じます。シングルモード・ファイバーでは、異なるファイバー間の後方散乱係数の違いによって指向性が影響を受けます。一方でマルチモード・ファイバーでは、コア径および開口数がより大きな役割を果たします。

これら指向性への影響要因のうち、後方散乱係数の違いは、双方向試験によって取り除くことができます。コネクターのどちらか一方のファイバーの後方散乱係数が異なる場合、一方向からテストした時の方が、もう一方からテストした時よりも損失が大きく見えます。

以下の例では、1 つめのコネクターのフェーズ 1 測定では、「マイナス損失」(-0.05 dB)の結果となる「利得」と呼ばれる現象が起きます。名前が示すように、信号がコネクターを通ることでその強度が高まっていることを意味しています。これは実際はありえないことであり、通常は 2 本のケーブル間の後方散乱係数の違いによって生じるアーチファクトです。もう一方の方向からテスト(フェーズ 2)すると、損失は 0.35 dB と測定されます。実際の損失は、これら測定値の平均または 0.15 dB です。

正確な損失量を取得するためには、終端1と終端2で測定された 2 つの結果の平均値を求める必要があります(図 1 を参照)。

図 1:一番左の接続では、-0.05 dB と 0.35 dB の平均値である 0.15 dB が実損失量になります。ファイバー自体の測定結果は、測定方法に関係なく、0.66dB のままであることに注意してください。

実態を把握

上記の方法は、OTDRベースの損失試験において最も正確な測定結果を出すものの、代償がつきます。2ステップの測定プロセスに加え、パッチ・パネルからパッチ・パネルへとテストを行う際に、遠端側でテイル・ファイバーを次のポートに移動する追加の人員が必要になります。この種のテストは時間が非常にかかるため、設置業者は簡単にテイル・ファイバーなしで試験を行う誘惑に駆られます。(この方法では、通常テスターとともにランチ・ファイバーも動かされます。これは、あらゆる試験標準に反し、ここに記載されている以上の測定エラーをもたらす可能性があります。)

図 2: テイル・ファイバーなしの双方向試験(図 1 と同じリンク)

 

手法 接続#1 接続#2 全体
ランチ & テイル・ファイバー(図 1 - 平均値) 0.15 0.29 1.04
ランチ・ファイバーのみ(図 2) -0.05 0.04 0.65
エラー(パーセント値) 133% 86% 36%

 

表 1:テイル・ファイバーなしの試験のエラー分析

ループありの OTDR テスト

上述の問題は、専門家の間ではよく知られていることであり、これに対応するために「ループバック式の OTDR 試験」と名付けられた手順が開発されました。この手順は、システム設計者によってますます使われつつあります。

図 3: 双方向試験

 

遠端にランチまたはテイル・ファイバーと似た長さのループバックを用いるすることで、デュプレックス・リンクの 2 つのファイバー(ファイバーAとファイバーB)を一度にテストすることができ、OTDR をもう一方の終端に移動することなく、双方向試験のフェーズ2を実施することが可能になります。この従来の OTDR を使用したループベース試験の唯一のデメリットは、ユーザーがトレースの取得後に個々のリンクの特定データを抽出するのに大がかりな操作が必要とされることです。

「SmartLoop™ Assistant」を使用したテスト

「SmartLoop Assistant」機能を備えた OTDR は、面倒で間違いを起こしやすい手作業によるループ・プロセスを自動化させ、ループベースの OTDR テスト・プロセスの利点を維持します。表 2 では、SmartLoop テストの利点を一覧にしています。

専門家によると、技術者が双方向試験を実施する時、多くの場合、ランチ・ファイバーとともに OTDR をもう一方の終端リンクに持ち運んでいるとのことです。これは根本的な間違いであり、双方向試験を行う目的と利点を台無しにする行為です。双方向試験に使われるランチ・ファイバーとテイル・ファイバーのどちらも、試験中に動かしてはなりません。図 4 は、このよくある間違いを防ぐのに役立つ SmartLoop-Assistant のアニメーション画面を示しています。

OTDR の SmartLoop Assistant は初心者でも使え、トレースが不完全になることはありません。このため、現場に戻って、再トレースする必要がなくなります。

図 4: アニメーション画面が、正しい試験方法を案内します。

 

図 5 では、SmartLoop Assistant がランチ/ループ/テイル・ファイバーを検知し、ファイバーAとファイバーBが正しい順序になっていること、期待する長さであることをチェックしているのが分かります。

図 5: SmartLoop Assistant は、求められる要素がすべて見つからないとユーザーに警告します。

図 6: SmartLoop は、それぞれのファイバーを両方向で測定し、平均値を計算します。ユーザーは、画面右下にある 2 つのボタンで表示を切り替えられます。上図(左から右へ):ファイバー A 終端 1 から終端 2、ファイバー A 終端 2 から終端 1、ファイバー A の平均結果

 

すべての要素を検出すると、SmartLoop Assistant は、両ファイバーの両方向の結果、および各ファイバーの平均結果の合計 6 つのテスト記録を作成します。ユーザーは、簡単に表示を切り替えられます(図 6 参照)。.

技術者 1 人いれば、図 7 に示すように、比較的小額の投資でループ・ファイバーを追加し、迅速かつ効率的に SmartLoop テストを行えます。ループ・ファイバーは、ファイバーの右側の終端に取り付けられます。次に、ファイバーの左側に移動し、ループバック付きの各ファイバー・ペアに対して SmartLoop テストを行います。そして、再び右側に移動し、テストする次のファイバー・セットにループ・ファイバーを移し、プロセスを繰り返します。この方法だと、上述の「テイル・ファイバーなし」の手法と同じくらいの速さで、より正確に行えます。

図 7: 複数のループを使用することで、技術者は遠端に移動したり、助けを求めることなく、双方向試験を行えます。

お客様の声

ワシントン州レントンを拠点とする Integrity Networks は、全米および環太平洋地域で通信サービスの提供、ケーブルと光ファイバー・ネットワークのインフラの設置を行っています。そのアンカレッジにあるアラスカ支社と現場技術者たちは、エネルギー会社から依頼され、1,400 本以上の光ファイバー・リンクの双方向試験を実施する必要のある極めて大規模な作業に取り組んでいました。冬場に行われた作業はさらに困難を極めました。気温と環境を考慮すると、建物に移動して光ファイバーの両端で試験を実施するのは難しく、危険でもありました。

「SmartLoop を見たとき、これで私たちの問題を解決できると思いました。チームは OptiFiber Pro を入手するとすぐに、操作を習得しました」と、Integrity Networks アラスカ地域マネージャーの Randy Sherman 氏は言います。「SmartLoop を使用することで、試験の総費用を 30 % 以上削減できました。実際、テスターの購入費用は最初の仕事で元を取ることができました」。

Twistnet Communications Ltd は、英国をはじめとする欧州の企業にコア・サービスを提供しており、光ファイバーの融着接合、 直接成端、OTDR やパワー・メーターによる試験、認証、および修理の専門家を擁しています。同社が請け負った大きなプロジェクトの一つでは、技術者が洋上風力発電所にある高圧変電所内で 400 本のリンクの双方向試験を行う必要がありました。このような環境で作業するには、安全衛生の誘導が必要になり、作業員あたり最大 500.00 英国ポンドの費用がかかります。

「SmartLoop 機能のおかげで、当社の技術者の代わりに風力発電所の技術者に変電所内で作業してもらうことができました。Twistnet Communications は、ループバック用のリード線を設置し、各リンクの双方向試験を行う方法を、風力発電所の技術者に教えました。風力発電所の技術者がリード線を動かしながら、各リンクを双方向にテストする間、Twistnet の技術者は無線機を通じて連絡を取り合いました。」

「このプロジェクトで SmartLoop を使うことで、4 人日と 2,000 ポンド以上のコストを節約することができました」と、John Marson 氏は言います。

「さらに、SmartLoop があれば、試験時間も短縮でき、プロジェクトを勝ち取る手助けにもなっています」と続けます。「試験・認証に SmartLoop を使い始めてから、約 20 件の契約を獲得しています。」

概要

利益性を追求するプレッシャーが強まる中、設置業者は仕事を早く終わらせ、そして何よりも「1 回目で正しく」やることを望んでいます。このためには、自動 SmartLoop など、作業を簡素化し、テストにかける時間を短縮する革新的なテスト機能が必要となります。OTDR の双方向試験を実施する時に、テスト時間を少なくとも 50% 短縮できるだけでなく、遠端に技術者を配置させる必要性をなくし、そして最もよくある根本的な間違いを防ぐのに役立ちます。

 

問題 長所・短所 手動ループ 自動スマートループ
1 + テスト時間を 50% 短縮
2 + OTDR をもう一方の終端に移動させる必要なし
3 + 融着接続後の 2 本のリンクが双方向にテストされ、摩耗がランチ&テール・ファイバーの両方に分散されるため、寿命が倍加
4 + 2 つの終端のうち、一方へのアクセスが制限されているまたは危険な場合に双方向試験が可能(無線基地局、風洞塔、高架駅、データセンターの高セキュリティゾーンなど)
5 − 後処理の時間がかかる:A と B のセグメント識別と別々の記録の作成  
6 − ユーザーの手作業の後処理により増加するエラーのリスク  
7 − 「ゼロ損失」(指向性が原因)の APC コネクタの処理が非常に困難  
8 + ファイバー・セグメントの A と B の自動識別と 2 つの別々の記録としての保存  
9 + 手動設定によるさらなるエラーソースなし  
10 + 「ゼロ損失」の APC 接続の自動処理  
11 + 双方向試験プロセスの正しい実行に役立つオンスクリーン・ウィザード  
12 + ランチ/ループ/テール・ファイバーの存在を検出する自動チェック機能  

 

表 2:ループ・ファイバーありの OTDR テストの利点

OptiFiber® Pro OTDR – 企業向けに設計

フルーク・ネットワークスの OptiFiber® Pro は、企業の光ファイバー・インフラならではの課題を解決するために、徹底した基本設計の検討から生まれた業界初の企業向け OTDR です。OptiFiber Pro OTDR のデッド・ゾーンは非常に短いため、仮想化されたデータ・センターにおける光ファイバー・パッチコードの識別が容易になります。SmartLoop™ 技術により、OTDR をリンクの遠端まで移動させることなく、TIA-568.3-D 規格要件に適合した、2 本の光ファイバーの双方向テスト、および測定値の平均化を数秒で行えます。

将来を見据えた設計となっており、Cat 5e から Cat 8 の認証、シングルモード/マルチモード光ファイバーの損失測定、および検査にも対応します。LinkWare™ Live と統合して、あらゆるスマート・デバイスからジョブおよびテスターを管理できます。