産業用イーサネット - 詳細

詳細:産業用イーサネットのメタル配線

  • 1970 年代にゼロックスのパロ・アルト研究所 (PARC) で開発されたイーサネットは、最も一般的なネットワーキング・システムとして世界中で使用されています。その後数十年間で行われた規格の大幅な変更や拡張によって、イーサネットは、当時の開発者が想像もしなかった様々なアプリケーションで活用されています。

    こういったアプリケーションの 1 つが産業用イーサネットです。業界関係者や標準化団体は、イーサネットの物理層を採用して、PROFINET、EtherNet/IP(産業プロトコル)、EtherCAT、および Modbus-TCP など、産業オートメーション向けに最適化された様々な技術を開発しました。

    産業用イーサネット - 詳細

    図 1. E1、E2、E3 規格など、様々なエンド・ツー・エンドのケーブル構成のテスト・リミット値を表示する DSX ケーブルアナライザー の画面。

    ケーブル配線規格とコネクター

    すべての産業用イーサネット・アプリケーションは、「標準」イーサネットで使用されるツイスト・ペアーのメタル線または光ファイバー・ケーブルで動作しますが、これらのケーブルには工場環境向けにいくつかの変更が加えられています。国際標準化機構 (ISO) と米国電気通信工業会 (TIA) は、産業施設内の潜在的環境条件を定義する一連の仕様を策定しました。これらは、MICE(機械、侵入、天候/化学薬品、電磁気)仕様として知られています。MICE レベルは、様々な環境条件(通常のオフィス環境の MICE 1、やや過酷な環境の MICE 2、重工業環境の MICE 3)について定義しています。

    業者はこれらの要件を満たすために、特殊なケーブルやコネクターを開発しました。耐屈曲性、耐熱性、耐侵入性、または腐食性薬品に対する耐性に優れたケーブルなどがこれにあたります。ほとんどの場合、こういった性能はケーブルの外皮要件に影響しますが、一方でMICE 1 と MICE 3 の電気特性は同じとなっています。しかし、電磁要件については大きな違いがあり、横方向変換損 (TCL) の要件が E1、E2、および E3 で定められています。この仕様は、溶接機、変速駆動装置、高圧電力などによって発生した、外部の電気信号干渉に対するケーブルの耐性を測定します。

    コネクターは液体や微粒子などの侵入点となるため、特に注意がです。侵入を防ぐ方法の 1 つとして、標準 8 ピンモジュラー・コネクター (RJ-45) 取り付け式の密封型レセプタクルに収納することです。このコネクターは、ほとんどの「標準」イーサネット機器とケーブルに対応しているという利点があります。「M12」コネクターは、衝撃/振動要件の厳しいアプリケーション向けに開発されました。この小型/丸型ネジ締込式コネクターは、2 ペア (M12-D)、または 4 ペア (M12-X) に対応しています。一般的な産業配線構造では、ケーブルの一端にモジュラー 8 ピン・コネクター、もう一端に M12 コネクターが装着されます。

    配線の問題

    図 2. E2 リミット値の TIA 1005 カテゴリー 6A テスト合格結果を表示する DSX ケーブルアナライザー。

    産業用イーサネットの問題の半数以上はケーブル配線に起因しています。これらの問題は、立ち上げ過程ですぐに明らかになることもあれば、環境の変化などの要因によって通信障害が発生するまで、接続性が正常に機能することもあります。イーサネットは、限界の環境においても継続的な通信を可能にする堅牢な技術です。しかし、環境の変化によって通信問題が発生したり、または通信不能になったりすることもあります。最も一般的な配線問題には次のようなものがあります。

    接続性 – ケーブル配線における最も基本的な要件は、一端のピンがもう一端のピンに正しく接続されていることです。誤配線や開放は、深刻な通信障害を引き起こします。「スプリット・ペア」と呼ばれる配線問題は、両端のピンが適切に接続されており、ケーブルの対の組合せが間違っている場合に発生しますが、これについてはあまり理解が浸透していません。この問題は、間欠的な故障や深刻な障害を引き起こします。

    長さ – 一般に、イーサネット・ケーブルの最大長は 100 m です。ケーブルが長すぎると、2 種類の問題が発生する可能性があります。まず、ケーブルが長すぎると伝送信号が弱くなり、遠端に適切に信号が届かないことがあります次に、イーサネットは、一定時間内に応答を受け取るよう設計されています。長すぎるケーブルは遅延の原因となり、このタイミングを阻害することがあります。いずれのエラーも深刻な障害または間欠的な故障を引き起こす可能性があります。たとえば、ケーブルの損失は温度の上昇とともに増加します。このため、ケーブルが長すぎると、低温では正常な伝送が可能であっても高温で障害が発生することがあります。

    クロストーク – これは、ケーブル内のペア間の電磁干渉を測定するものです。たとえば、「送信」ペアの伝送信号が受信ペアに干渉する場合があります。送信機はこの干渉を入力信号と判断すると、送信を停止します。これによっても、深刻な障害や間欠的な故障が発生します。クロストークは、信号周波数が増加するに従って増大するため、ネットワーク・ケーブルの最大性能を左右する重要な要因となります。

    図 3. E3 レベル・テストの不合格結果を表示する DSX ケーブルアナライザー。TCL が不合格になっています。

    シールドの完全性 – 産業用イーサネット・ケーブルの多くはシールド(通常は金属箔シールド)を使用し、ケーブル外皮内部の各ペアーを覆うように使われます。シールドは、ケーブル周辺の高電圧/高電流機器によって発生する外部電磁干渉 (EMI) の影響を低減します。EMI によってケーブルの伝送エラーが発生し、通信速度が低下したり、通信が不能になることもあります。この問題は、周囲でモーターが起動したり、溶接治具が使用された場合など、強力な干渉によって信号のバランスが崩れた時のみに発生するため、トラブルシューティングが非常に困難です。シールドを効果的に使うには、全長にわたってケーブルを覆う必要があります。わずかでも隙間があると、シールド性能は大きく低下します。このため、シールドのテストを行って、全長にわたってケーブルがシールドされていることを確認する必要があります。シールドは通常接地されているため、この測定は特に困難です。単純な直流測定では、シールドに隙間がないこと、両端で接地されていることを確認できません。

    横方向変換損 (TCL) – これはケーブルの「平衡度」(1 ペアの 2 つの導線で等しい信号を伝送する性能)を測定します。ツイスト・ペアー・ケーブルは、1 ペア内の 2 つの導線で同じ信号を逆向きに流すことによって、高いノイズ耐性を達成します。ケーブル配線が原因で信号が不平衡になっている場合、外部ノイズにより干渉と歪みが発生し、受信機が信号を認識できません。上述のとおり、EMI 問題の切り分けと解決は非常に困難です。この問題に対応するために、標準化団体は、MICE E1、E2、E3 環境でのケーブル配線を対象にした TCL 性能要件を策定しました。

    メーカー認定のケーブルとコネクターを使用して、上記の要件を満たした場合でも、故障のない稼動を完全に保証することはできません。最良の業者でも規格外製品を作ることがあります。また、敷設方法が不適切なこともよくあり、この場合は最高品質の部材を使っても良好なリンク性能を維持することはできません。

    ケーブル・テストが稼働時間の改善に

    図 4. DSX ケーブルアナライザーは、様々なケーブル配線障害を検出し、技術者が簡単に理解できるように表示します。

    適切なケーブル・テスト・ツールを使い、その基本的使用方法を理解することにより、次の 3 つの方法で稼働時間を改善できます。

    迅速な立ち上げ – 要求仕様をすべて満たし、正常に機能することを確認するには、ケーブルを接続する前に上記のパラメーターを測定する必要があります。

    突然のダウンタイムを回避 – 立ち上げ時にケーブルがデータを送信した場合でも、すべての状況で正常に機能するとは限りません。敷設後の環境の変化により、障害が発生することがあります。ケーブルを上記のパラメーターに基づいてテストし、合格すれば、これらの要因によって将来ケーブルが故障することはありません。

    より速やかに問題を解決 – テスト済みのケーブルでも、誤った切断、剥離、溶融など、不適切な取り扱いによって故障することがあります。ネットワーク障害が発生した場合、ケーブル配線の問題を速やかに診断することで、時間を大幅に節約できます。疑わしいケーブルを何時間もかけて交換するのではなく、数秒のテストで問題がないことを確認することで、他のトラブルシューティングに時間を費やすことができます。ケーブルが故障していた場合は、テスターの診断機能で問題を正確に特定できます。たとえば、遠端のコネクターが故障していることがわかれば、不良のコネクターを数分で交換できます。何時間もかけてケーブル配線を変更する必要はありません。

    このように、敷設時にケーブルをテストすることで、立ち上げ作業を迅速に行って、将来の問題を未然に防ぐことができます。障害の発生時にケーブル・テスターがあれば、迅速にトラブルシューティングを行って、ダウンタイムを低減できます。

    産業用イーサネット向けのケーブル・テスト・ツール

    ケーブル・テスト・ツールは、展開前用テスターとトラブルシューティング用ツールの2 種類があります。

    展開前用(認証)テスター – これらのツールは、クロストーク、シールドの完全性、TCL など、上記のすべてのケーブル配線パラメーターをテストします。DSX ケーブルアナライザー・シリーズは、ケーブル全長にわたるシールドの完全性を含め、これらすべてのパラメーターを測定する唯一のケーブル・テスターです。テスターは合否結果を生成し、記録用にレポートを作成します。ケーブルが上記の要求仕様をすべて満たすことを確認するには、立ち上げ前に認証ツールを使ってテストする必要があります。これは、ケーブル配線問題を未然に防ぐ最も効果的な方法です。これらのツールはトラブルシューティングにも使用でき、ケーブルの断線だけでなく、ケーブルに侵入した水や仕様外のコネクターなど、より困難な問題も検出します。

    トラブルシューティング・ツール - これらのツールは、ケーブルが適切に接続されていることを検証し(スプリット・ペアのテストも行います)、ケーブル長の測定、ケーブルの断線位置の特定を行います。これにより、多くの時間を節約でき、ケーブルに問題がない場合にも、作業者はそのことをを確認して、実際の問題を検出できます。

    認証テスターを購入できない場合は、貸出されているテスターを利用するか、または立ち上げ前にケーブル敷設業者にテストを行ってもらうことで、新しいプロジェクトでテスターの機能を活用できます。安価なトラブルシューティング・ツールは、必要に応じて施設に常備しておくことができるため、障害の発生時に、貸出機や請負業者の手配に伴う時間を省くことができます。ツールは時間を大幅に節約するため、1 つのネットワーク障害を解決するだけでコストを回収できます。

    フルーク・ネットワークスの産業用イーサネット向けケーブル・テスト製品の比較

      MicroScanner  CableIQ  DSX シリーズ 
    主な用途  トラブルシューティング  トラブルシューティング  敷設、トラブルシューティング 
    接続性 
    長さ 
    クロストーク     
    シールドの完全性     
    TCL     
    レポート   
    障害の検出  ベーシック  ベーシック  高度 
    M12 サポート  オプション  オプション  スタンダード