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直流抵抗の不平衡テスト:PoE システムのための簡単かつ安価な保険

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概要

IEEE により 1999 年および 2003 年にそれぞれ承認されたギガビット・イーサネット(1000BASE-T)とパワー・オーバー・イーサネット(PoE)は現在、標準と見なされる 2 つのネットワーク・テクノロジーです。両テクノロジーは、敷設済みのケーブリング・ベースのおよそ 85% でサポートされており、 LAN 環境にギガビット・イーサネットおよび PoE 機器を導入または計画している組織がかつてないほど増えているくらい、過去 10 年間にどちらも普及してきました。

10/100BASE-T(つまり 10Mbps および 100Mbps)では、4 本のより対線のうち、送受信用に 2 本しか使用しないため、残りの 2 本を PoE に使用できますが、ギガビット・イーサネットでは、双方向通信のために 4 対すべて必要になります。このため、データが送受信される同じ対線上で PoE 電力が供給されることになります。

これは、ファントム電源とも呼ばれ、4 対のイーサネット・ケーブルの 2 対にコモンモード電圧を加えることで実現され、PoE はデータ通信に干渉しないようになっています。一方で、PoE 接続における直流抵抗不平衡は、大きな問題を引き起こす可能性があります。TIA や IEC パフォーマンスの現場試験で必須ではないものの、抵抗不平衡は IEEE の PoE 規格で規定されており、直流抵抗不平衡を現場試験の要件にすることは、デバイスが必要な電力とデータを得られるようにするのに大いに役立ちます。IEEE 802.3bt と呼ばれ、最大 100W の電力を供給できる新しい PoE 規格では、この 2 対の PoE システムが 4 対の PoE システムに移行することになります。対線内の直流抵抗不平衡が問題を引き起こす可能性があるだけなく、対線間の直流並列抵抗不平衡も潜在的問題の原因として考慮する必要がでてきます。

PoE と 直流抵抗不平衡の理解

PoE の IEEE 802.3af 規格は、ツイストペアのデータ・ケーブルを介して、遠隔地のデバイスに低圧電源を供給する目的で策定されました。一般的に PoE 対応のスイッチまたはミッドスパン電源装置である給電側機器(PSE)により、電力が注入されます。この電力は、VoIP 電話、無線アクセスポイント(WAP)、掛け時計、センサー、カメラ、アクセス・コントロール・パネルといった幅広い種類の受電側機器(PD)によって使用されます。

最初の IEEE 802.3af 規格では、2 対ケーブルで最大 15.4 W(使用可能な電力 13 W)の電力を給電でき、現行の IEEE 802.3at PoE Plus 規格では、それが最大 30 W(使用可能な電力 25.5 W)に増加しています。新たに提案される IEEE 802.3bt PoE Plus Plus 規格は、承認されれば、100W の電力を給電できるように設計されています。PoE Plus は、ハイパワー WAP、PTZ カメラ、LED ディスプレイ・ボードなどの消費電力の高い機器に対応するために開発されました。ギガビット WiFi 用の最新の 802.11ac 規格では、信号処理の高度化とフレームレートの増加により、より高い電力要件が定められ、PoE Plus が欠かせません。PoE Plus Plus は、マルチラジオ WAP、PTZ やヒーター機能を備えた CCTV カメラ、LED データセンターの照明といった消費電力が高い機器に電力を供給するために開発されています。

IEEE 802.3af および 802.3at 規格では、4 対のデータ・ケーブルの 2 対を使用して、PSE が給電する 2 つの方法、Alternative A と B を規定しています。Alternative B の場合、未使用の 2 対(ペア 1 と 4)を使用して給電を行います。これは、10/100BASE-T など、2 対(ペア 2 と 3)しか使用しないデータ信号と互換性があります。Alternative A の場合、データ通信に使用する 2 対(ペア 2 と 3)を使用して給電を行います。これは、10/100BASE-T と 1000BASE-T を含む、2 対と 4 対の両アプリケーションと互換性があります。

Alternative A では、コモンモード電圧を加えることで、データ通信用ペア上で給電が行われます。電力は、対線の各導体に電流を分割するPD の変圧器のセンタータップを使用して受電・帰還します。対線の各電線の抵抗が同じである場合、直流抵抗不平衡(2 つの導体の抵抗差)はゼロであり、電流が均一に分割され、コモンモード電流が流れます。

IEEE 802.3bt では、必要な電力を供給するために、4 対をベースにしたシステムに移行します。PSE と PD 機器も、4 対で電流を共有することになります。

デバイスはある程度の直流抵抗不平衡に耐えられるものの、不平衡が大きすぎると、変圧器が飽和する可能性があります。これにより最終的に、イーサネット・データ信号の波形が歪み、ビット・エラーや再送信を生じさせ、データ・リンクが機能しなくなることもあります。4 対の PoE システムになると、対間である程度の DC 抵抗は許容されるものの、過剰に大きい場合、PoE が機能しなくなります。

直流抵抗不平衡の原因

導体間および対線間の直流抵抗不平衡は、さまざまな理由で PoE データ・リンクに生じます。センタータップのオフセットなど、変圧器の問題はPSEとエンド・デバイスの両側で生じる可能性があるものの、直流抵抗不平衡は、欠陥、一貫性のない終端、基準以下のケーブル品質に起因することの方が多いのです。

昔から不適切な設置方法が、ネットワーク・パフォーマンス問題の核心となっていました。最小曲げ半径を許容値以上にしたり、ケーブルの対撚をなるべく成端点に近づけるといった慣行は、特に 1000BASE-T や 10GBASE-T といった高周波用途において、パフォーマンス・パラメータを満たすために重要です。PoE は、高周波伝送の特性よりも、特定の長さのケーブルの DC 抵抗に依存しているため、一部の設置手順は重要になってきます。

個々の導体の成端部の整合性が、直流抵抗不平衡を防ぐために重要です。ネットワーク・ジャックの適切な IDC 端子に導体をパンチダウンすることで、導体の絶縁体が剥離されて中の銅線が露出し、接触が可能になります。

ケーブル導体の適切かつ整合性のある着座も簡単ではありません。導体を着座させるには、一定の力が必要であり、経験不足、手の疲れ、大きい導体サイズなどすべてが、整合性を維持する能力に影響を与えます。PoE 給電を行う対となる 2 本の導体が整合性なく成端された場合、直流抵抗不平衡が生じる可能性があります。適切な成端ツールを使えば、成端の整合性を向上させ、PoE システムにおける直流抵抗不平衡を防げます(成端ツールについては、サイドバーを参照)。

ケーブルと接続に品質も直流抵抗不平衡に影響を与えるため、入念な成端に加え、精密製造プロセスも重要になります。良質の UTP ケーブルの製造には、銅導体の厳選とケーブルの適切な物理的形状を維持するための厳しい管理が必要です。粗悪なケーブルは、銅導体の直径、同心度(真円度)、輪郭、滑らかさにバラツキがあり、PoE システムに直流抵抗不平衡が生じるリスクが高まります。

業界では、銅クラッドアルミニウム(CCA)、銅被覆鋼、およびその他の規格外の導体が使われる多導体通信ケーブルが数多く存在し、それらがカテゴリー 5e あるいはカテゴリー 6 ケーブルを装っているという懸念が高まりつつあります。安価なネットワーク・ソリューションを求める者にとってこれらのケーブルは魅力的に見えるものの、CCA ケーブルは業界標準に準拠しておらず、同じ直径の固体銅のケーブルと比べ、直流抵抗が 55% 高くなるため、PoE 用途をサポートしていません。抵抗が大きいということは、ケーブルの発熱量が大きくなり、電源供給デバイスに提供される電圧が低くなることを意味します。

残念ながら、一部の CCA ケーブルは、短いリンクであれば直流ループ抵抗試験をパスしてしまうため、PoE をサポートできるか判断するにあたって、直流抵抗のテストでは必ずしも十分ではありません。一方で、リンクの長さにかかわらず、CCA ケーブルは通常、導体間の整合性に欠けるために直流抵抗不平衡が生じます(直流ループ抵抗と直流抵抗不平衡について、サイドバーを参照)。また、ANSI/TIA と ISO/IEC の両規格は、ツイスト・ペアー・データ・ケーブルが 100% 銅線であることを求めていることに留意する必要があります。

導体間および対線間の直流抵抗不平衡のテスト

IEEE 802.3-2012 規格は、導体間の最大直流抵抗不平衡を 3% と規定しています。つまり、2 本の導体の直流抵抗差が、対線の総直流ループ抵抗の 3% を超えてはなりません。ただし、TIA と IEC の両規格では、導体間または対線間の直流抵抗不平衡を現場試験の要件として求めていません。現場試験の要件として挙げられていない理由の一つに、現場テスターに直流抵抗不平衡をテストする能力が備わっていなかったということもあり、検査室のみでの測定項目になっていました。DSX-5000 CableAnalyzer の登場により、もはやそうではなくなりました。さらに、提案される IEEE 802.3bt 規格では、対線間の直流抵抗不平衡が 7% または 50mΩ 以内にすることを要件としています。

直流抵抗不平衡のテストでは、対線の両導体の抵抗が同じであること、それによって PoE を効果的にサポートするために必要なコモンモード電流を実現でき、同じ対線で送信されるデータ信号に歪みが生じないことを確認します。直流ループ抵抗しかテストしない他の現場テスターとは異なり、DSX-5000 は直流ループ抵抗、導体間の直流抵抗不平衡、および対線間の直流抵抗不平衡を測定します。

下図 1 で示すように、直流ループ抵抗は対線の 2 本の導体の抵抗の合計値として測定され、直流抵抗不平衡は 2 本の導体間の抵抗差を測定したものです。対線間の直流抵抗不平衡は、ペア 1,2-4,5 で測定され、2 つの対線の並列抵抗の絶対差です。

図 1

現場試験では求められていないものの、DSX-5000 CableAnalyzer は、チャネルまたはパーマネント・リンクに対して、下記の表 1 で示す直流抵抗不抵抗テスト・リミットを含めるように設定できます。

DSX CableAnalyzer のテスト・リミット名 直流抵抗不平衡
チャネル パーマネント・リンク
TIA Cat 5e パーマネント・リンク (+すべて) 0.20 または 3.0% 0.20 または 3.0%
TIA Cat 6 パーマネント・リンク (+すべて) 0.20 または 3.0% 0.20 または 3.0%
TIA Cat 6A パーマネント・リンク (+すべて) 0.20 または 3.0% 0.20 または 3.0%
ISO11801 PL クラス D (+すべて) 0.20 または 3.0% 0.15 または 3.0%
ISO11801 PL クラス E (+すべて) 0.20 または 3.0% 0.15 または 3.0%
ISO11801 PL2 クラス Ea (+すべて) 0.20 または 3.0% 0.15 または 3.0%

 

DSX-5000 でパーマネント・リンクまたはチャネルの測定を行う場合、図 2 で示すように、指定するテスト・リミットに対する合否判定が行われます。これは、PoE の問題を観察し、ケーブル配線を問題の原因として除外し、新しく敷設するケーブルがデータを伝送できるだけなく、PoE もサポートできる確信を得たい場合には、役に立つ情報です。

図 2

現場試験の標準における試験要件は最小限であるため、CCA ケーブルの問題に対処し、IEEE PoE 要件をより確実に満たすために、直流抵抗の不平衡を現場試験の対象の一つとして定義することを検討すべきです。

より多くの企業がギガビット・イーサネット技術やデータと同時に電力を供給する PoE 機器を導入するにしたがって、導体間および対線間の直流抵抗不平衡のテストに対す関心が高まると考えられます。PoE Plus の展開が広がる中、またそれを必要とする 802.11ac 対応の WAP の登場により、導体を流れる電流の増加で PoE が直流抵抗と抵抗不平衡から受ける提供がさらに大きくなるため、直流抵抗不平衡に対する懸念も高まることでしょう。さらに、60 W を必要とする機器により多くの電力を供給できる PoE Plus Plus がすぐそこまで迫っています。

貴社の PoE システムを不安定な状態のままにしないでください。直流抵抗不平衡テストの必須化は、DSX-5000 があれば、今日そして将来の PoE システムにとっての簡単かつ低コストの保険になります。

適切な成端ツールで成端の整合性向上

適切な成端ツールを使えば、成端の整合性を向上させ、PoE システムにおける直流抵抗不平衡を防げます。通信ケーブルの成端用のパンチダウン・ツールには、マニュアル、インパクト、およびマルチワイヤーの3種類があります。マニュアル・パンチダウン・ツールは、主に人の力に頼るため、対線の 2 つの導体に不整合が生じる可能性が高まります。それぞれの導体に対して、いつも同じ力を加えることは非常に困難であり、手が疲れてくると、力加減に一層のバラツキが生じます。

設置者の力にそれほど依存しないインパクト・ツールはより良い選択肢ではあるものの、これらのツールでも導体ごとに成端の不整合が生じます。成端の整合性を確保するための最善のオプションは、すべての対線を一握りで成端でき、導体すべてに均一の力を加えることができる JackRapid などのマルチワイヤー・ツールです。マルチワイヤー・ツールは、シングルワイヤーの成端ツールと比べ、8 倍の速さジャックを成端できるため、手の疲れを和らげ、作業時間も大幅に短縮できます。より素早い確実かつ整合性のある成端は、再作業とコストを最大 80%も削減させることができます。

直流ループ抵抗と直流抵抗不平衡

直流ループ抵抗と直流抵抗不平衡の違いをめぐり、混乱が生じることが多々あります。特定の電力量を給電できる能力は、特定の長さのケーブルの総直流ループ抵抗に依存しています。直流ループ抵抗は、対線の 2 本の導体の直流抵抗の合計として計算されます。According to IEEE standards, the channel DC loop resistance of a pair shall be 25 Ω or less while permanent link DC loop resistance shall be 21 Ω or less.

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