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ケーブル認証機器のキャリブレーションを行う理由
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このページに記載されていること
はじめに
お客様は、ご自分のケーブルテスト機器に対して真剣です。一流ブランドをお求めになるので、高い精度を当然期待します。キャリブレーションのために、テスターをわざわざ試験所に送る人もいることをご存知なのに、それを不思議に思います。なぜなら、キャリブレーションがずれる可動部分もなく、すべてが電子式だからです。キャリブレーション担当者は、一体何をやっているのでしょうか?電池の交換だけでしょうか?
これらの懸念はもっともなことであり、キャリブレーション中はテスターを使用できませんので、なおさらのことです。では、他に懸念すべき点も考えてみましょう。例えば、何らかの事故で、テスターの精度が低下したり、使用が安全ではなくなったらどうしますか?厳しい精度要件の中で作業しており、高額なプロセスや安全システムを適切に運用するためには、正確な測定が欠かせない場合はどうしますか?プロジェクト全体にわたってトレンディングや損失測定を行っており、同じ測定に使われた2つのテスターの結果が大幅に異なる場合はどうしますか?

ケーブル認証機器のキャリブレーションを行う理由
構造化されたデータ通信用ケーブル配線の現場認証は、リスクの高い戦いと言えます。仕事に対する報酬を受け取れるかどうかは、数千にも及ぶことが多いすべてのリンクが認証を通るかどうかに通常かかっています。欠陥のある認証機器は、さまざまな方法で大惨事を招く恐れがあります。例えば、認証機器が不良リンクを合格にした場合はどうでしょうか?この場合、今後システムを利用するユーザーは、ケーブルの製造工場まで追跡できるネットワーク問題に遭遇する可能性があります。これらの問題によって、設置業者は訴訟に巻き込まれ、作業のやり直しや修理の責任を負わされます。その一方で、認証機器が良好なリンクを不合格にした場合はどうでしょうか?そうなれば、設置業者は修理と作業のやり直しに不必要な時間とお金を費やすことになります。
フルーク・ネットワークスの設計チームは、正確さと信頼性を本質的に保証できる堅牢な認証機器を開発することに焦点を合わせています。当社の製造チームは、欠陥のある機器が出荷される可能性をゼロにすることに尽力しています。しかしながら、機器が使われ始めると、性能に影響を及ぼす避けられないさまざまな要因が関わってきます。
その要因とは、単純に時の流れと関連する環境的ストレスです。測定システムの部品、例えば、レジスタ、コンデンサ、集積回路などは、非常に安定しています。しかし、これらの部品も、操作中に加え、保存時や持ち運び時に生じる温度と湿度の変動により、時間と共に必ずわずかな変化を見せることになります。機器が使われる前日は、氷点下になる車のトランクの中に置かれ、テスト当日は通常のオフィス環境で急激な温度上昇を経験することになります。制御された環境であっても、一日に何度も電源オン/オフを繰り返す中で測定エンジンが電力を使うため、回路アセンブリが熱くなり、その後冷めるといった温度変動を経験します。もう一つ油断のならない要因として、厳しい環境事象によって引き起こされる不具合が挙げられます。例えば、機器がハシゴの上からコンクリの地面に落下したとしましょう。衝撃に耐えられる設計になっていて、厳しい認定試験を経ているため、機器が生き延びる可能性は高いです。それでも、部品が緩んだり、損傷する危険性があります。その部品によって、わずかな精度低下が生じ、合格や不合格の間違いが起きる可能性があります。プリント基板の清潔な表面を汚す物質で機器が汚染された場合はどうでしょうか?これによって漏電が生じ、精密な抵抗測定に悪影響を及ぼす可能性があります。これで、正確性に対する信頼を、時間と共に失わせる予期できる要因と予期できない要因をはっきりと想像できたことでしょう。
キャリブレーションとは
これらの不確実さは、いくつかの利点がある定期的な機器のキャリブレーションを通して、大幅に緩和することができます。キャリブレーションの第一のステップは、基本的に測定評価と補正プロセスから成ります。機器が包括的な一連のキャリブレーション標準に接続されます。機器で各標準を測定し、以降の測定結果のバラツキが補正されるように内部に補正データを保存します。このプロセスの非常に役立つ点として、包括的な自己テストが同時に行われることが挙げられます。アーチファクトごとに、機器の内部キャリブレーションデータが合格/不合格テンプレートと照らし合わせられます。不合格は、故障回路を意味します。これらのテンプレートは、数多くの機器を対象とした厳密な統計分析を通して作成され、機器の健全性を評価するための高感度テストの役割を果たします。
第二のステップは、一連の検証アーチファクトの測定です。これらのアーチファクトは、機器側から見て、ケーブルリンクのように振る舞います。例えば、挿入損失アーチファクトは、100m のケーブルリンクと似た測定結果をもたらします。アーチファクトは伝達標準として使われます。各アーチファクトは、高精度かつNISTトレーサブルなベンチテスト装置を採用した試験システムにより測定されています。その結果データはアーカイブされ、機器のテスト結果と照合されます。その差異が測定精度であり、機器の不確かさの仕様に基づいて計算された合格/不合格の限界値と比較されます。
要約すると、キャリブレーションプロセスは機器の測定結果のバラツキを補正し、高感度の自己テストを実施して、NISTトレーサブルな伝達標準に照らし合わせて精度を検証します。最終的に所有者は、安心していつでも使える最高の状態で機器を受け取ります。
キャリブレーション頻度
問題は、キャリブレーションするかどうかではなく、いつするのかです。特定の機器の精度がどのように変化するか、確実に予測することはできません。しかし、数十年に及ぶ製造実績、そして世界中で何万台も使われている稼働実績を持つ弊社は、キャリブレーション頻度に関する提案を裏付ける実験に基いた確固たる根拠を持っています。原則として、コストとダウンタイムの適度なバランスを取りながら、高い信頼性を維持するためには、少なくとも 1 年間に一度はキャリブレーションを定期的に実施することを推奨します。
その他の状況によっては、不定期なキャリブレーションを追加で行うことも必要になります。例えば、大規模な仕事を請け負う前に、キャリブレーションの実施を検討すべきです。一方で、仕事を終えたすぐ後にキャリブレーションがうまくいけば、その仕事の結果が正確であるとという強い自信を得られます。また、強い衝撃や極度の温度変化など、機器が損傷する可能性がある事象が起きれば、キャリブレーションを検討すべきです。
この記事は、テスターのキャリブレーションに焦点を当てていますが、モジュールにも同じ論理が当てはまります。
キャリブレーションとは、テスト機器の「微調整」ではありません。どちらかと言えば、安全かつ確実に必要とする正確なテスト結果を得るための行為です。 それは、品質保証の一種と言えます。お客様はケーブルテストの重要さを理解されております。さもなければ、テスト機器を最初からお持ちになることはないはずです。ケーブルの検査が必要であるのと同じように、テスト機器の検査も必要なのです。
ゴールド・サポートで、年 1 回の無料キャリブレーション
ゴールド・サポートには、年 1 回の無料校正および工場点検が含まれています。お客様のケーブル・アナライザーまたはファイバー・バンドルは、工場仕様に合わせて精密にキャリブレーションされます(校正証明書付き - トレーサブル・データ付きのキャリブレーションは追加料金)。キャリブレーションは、フルーク・ネットワークス独自の一連のテスト手順を用いて行われ、必要に応じて正規の修理部品で調整 / 修理されます。ソフトウェアおよびファームウェアのアップデートの適用、すべてのアクセサリーの検査も行われ、不良があれば交換されます。その後クリーニングが行われ、性能が検証されます。一般的なキャリブレーションの所要時間は 5 営業日です。BF キャリブレーションの場合は、ゴールド・メンバー用代替機の貸し出しも行っています(ほとんどの地域で利用可)。Learn more about Gold Support at www.flukenetworks.com/goldsupport, contact your local representative or Gold Sales 888-283-5853.
ゴールド・メンバー以外のお客様は、フルーク・ネットワークスの認定サービス・センターで、優れたサービスおよび修理を受けられます。Simply find the Service Center closest to you and they will help you with your Fluke Networks repair and calibration needs or contact us at 1-888-993-5853.