オーディオ/ビデオ(AV)ケーブル配線時の考慮点

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今日の AV システムのテスト:見かけ以上のものがある

教室での遠隔授業、役員室でのビデオ会議、あるいはカフェテリアでのデジタル・サイネージなど、構内配線を使用する音響・映像(AV)システムを導入している企業がますます増えています。

高解像度のビデオ・ストリーミングやビデオ会議からデジタル・サイネージ、コンテンツ共有まですべてをサポートするため、これらアプリケーションの多くが、家電製品および商用向けの接続規格、HDBaseT を活用する一方で、Internet Protocol(IP)ベースのビデオを利用しているアプリケーションもあります。

これら AV システムをサポートするための構内配線を構築および試験するにあたって、AV システムには目に見える以上のものがあります。また、エラーのない映像および画像の伝送を実現するための重要なパフォーマンス・パラメータおよびベスト・テスト・プラクティスを把握しておくことが重要です。

HDBaseT および IP ビデオの概要

HDBaseT Alliance によって推進および発展される家電製品および商用向けの接続規格 HDBaseT は、無圧縮の 4K 映像信号、音声、100BaseT イーサネット・データ、電力、制御信号を一般的なカテゴリー・ケーブルと RJ45 接続で最長 100 メートルまで伝送します。これは、最大 100 メートルまで伝送できる一般的なカテゴリー・ケーブルと RJ45 接続を使用する IP ベースのビデオ・システムに似ています。

しかし、HDBaseT のケーブル配線基盤は、パケットベースのイーサネット・プロトコルを使用する IP ベースのビデオと同じように見えても、実際は異なるプロトコルを使用しています。HDBaseT とイーサネットはどちらもパルス振幅変調(PAM)の符号化技術を使用し、イーサネット・チャネルをサポートする一方で、HDBaseT はパケット・ベースのデータではありません。

さらに、HDBaseT システムは、HDBaseT 送信機と HDBaseT 受信機を接続する専用ケーブルを使用しており、データ・ネットワークとは分離されています。IP ベースのビデオ信号は、IP ベースの音声とデータを伝送する同じケーブル配線、および一般的なイーサネット・スイッチやルーターを介して伝搬されます。HDBaseT 専用機器に関しては、HDBaseT システムにおける相互運用性を確保するため、送信機/受信機からプロジェクター、ディスプレイに至るすべてが、HDBaseT Alliance によって認証されています。イーサネット・ネットワークに接続された HDBaseT 機器は、通常イーサネット機能を有効にしているだけで、映像/音声を伝送しません。

一般的なケーブル配線、プラクティス、およびパラメータ

HDBaseT と IP ベースのビデオがどちらも同じケーブル・メディア上を流れるため、ペア・ツイストのメンテナンスから、曲げ半径が許容値を超過しないことの確認、電源から遠ざけるようにするなど、ケーブルの扱いおよび成端に関する同じベスト・プラクティスを適用して展開されます。また、どちらも 100 メートルのチャネル上で伝送されます。

これら AV システムの他の共通点としては、ケーブル品質の重要性が挙げられます。ケーブルが良質であるほど、信号がよくなります。より高品質のケーブルを使用すれば、HDBaseT および IP ベースのビデオ信号をより長い距離伝送することができます。どちらのシステムにおいても、干渉が多い環境では、シールド付きケーブルが推奨されます。

もう一つの共通点は、エイリアン・クロストークです。HDBaseT は、カテゴリー 5e またはカテゴリー 6 ケーブルを使用できますが、いずれもエイリアン・クロストークに関する仕様を定めていません。これは、個々の HDBaseT チャネルでは問題になりません。しかし、高速イーサネット信号を伝送するケーブルの束と同様に、HDBaseT を伝送するケーブルの束は、エイリアン・クロストークの悪影響を受けます。そのため、同じ経路内で複数の HDBaseT ケーブルをサポートできるように設計されたカテゴリー 6A の使用が推奨されます。

伝搬遅延および遅延スキュー

AV システムにおいて認識すべき他のパフォーマンス・パラメータには、伝搬遅延と遅延スキューがあります。遅延は、ケーブルの種類を問わず、すべての信号に起きます。伝搬遅延とは、一端から送信された信号がリンクまたはチャネルのもう一端に届くまでの時間です。カテゴリー 6 や 6A などのツイストペア・メタル配線における伝播遅延には、公称伝搬速度(NVP)のほか、ケーブルの長さと動作周波数が関係しています。

ケーブル・メーカーによって規定され、パーセンテージで表記される NVP は、ケーブルの材質によって異なります。NVP とは、真空中の光速度と比較した信号がケーブルを伝わる速度のことです。真空中の光速度は、実現し得る最大速度であるため、NVP の値は必ず 100% 未満となります。ほとんどのツイストペア・ケーブルは、60~80% の範囲に収まります。NVP が低いほど、遅延が大きくなります。

すべてのペアが信号を伝送する 4 ペア・ケーブルを見てみると、ペアによって遅延が異なる場合があります。これを伝搬遅延スキューと呼び、遅延が最も小さいペアと最も大きいペアの差異でもって計算されます。

遅延は、一般的にケーブルの全体的構造が要因になるものの、遅延スキューは、主にペア配列の不整合性やツイスト率に起因します。例えば、ペア間で極端なツイスト率の違いがあると、遅延スキューが大きくなります。ツイストペア・メタル線ケーブルはどれも、クロストークを最小化するために意図的にツイスト率にばらつきがあるため、いくらかの遅延スキューが発生します。しかし、このパフォーマンス・パラメータ(ナノ秒単位)に不合格になったケーブルは、今日の AV アプリケーションに重大な影響を与える可能性があります。

通常、機器がこれらペア間の時間のズレを補正できるものの、遅延スキューが大きすぎると、ビット・エラー率やジッターが増加してしまいます。各色が別々のペアに伝送される高解像度の RGB ビデオ信号では、遅延スキューが大きすぎると、画質が劣化します。

業界規格では、遅延スキューを 50ns(ナノ秒)未満と規定しているものの、上の図で示しているように、ビデオ・アプリケーションでは遅延スキューが 25ns 未満がより望ましいです。商用環境における AV システムの普及が高まり続ける一方で、多くのケーブル・ベンダーは、遅延スキュー値が 2 または 3ns に近い「低スキュー」ケーブルを提供し始めています。

DSX CableAnalyzer シリーズは、長さ測定の一環で遅延スキューも測定します。

どちらでも給電可能

HDBaseT および IP ベースの AV システムは、どちらも電力を供給できます。一方が Power over HDBaseT(POH)、もう一方が Power over Ethernet(PoE)を使用しています。IEEE 802.3 PoE 規格に基づく POH は、4 ペアのカテゴリー・ケーブルを通して、HDBaseT ビデオ信号とともに最大 100W の DC 電力を給電できます。まもなく承認される予定の IEEE 802.3bt 規格は、4 ペアのカテゴリー・ケーブルを通して、最大 60W(タイプ 3)または 90W(タイプ 4)の DC 電力を給電できます。これは、一般的な LED ビデオ・ディスプレイを動作させるのに十分な電力レベルです。実際、Energy Star™ 6.1 は、60 型以下のテレビの消費電力を 100W 以内と制限しており、そのワット数も減少し続けています。

PoH および PoE テクノロジーは、ビデオ・ディスプレイに給電するコスト効率の高い、かつ簡単な方法を実現し、AC 電力の必要性を無くします。その一方で、4 ペアすべてを通して高い DC 電力を送ることに関して、どちらも同じ懸念が生じます。ケーブル束内の温度上昇が最大の懸念です。温度は挿入損失に直接影響するため、遠隔給電アプリケーションにおいては、ケーブルの温度が TIA 規格によって規定される最高使用温度、および推奨される最大温度上昇 15°C を超えないようにすることが重要です。

DC 電力を供給する際には、温度上昇に対抗するため、ケーブル束のサイズを減らし、より高いカテゴリーまたはシールド付きのケーブルを使用して、チャネル長を減らすことが推奨されます。例えば、60 本のカテゴリー 6A ケーブルの束は、カテゴリー 6 よりも 12% 低い温度上昇を見せます。また、シールド付きであれば、シールドが断熱材の役目を果たし、さらに温度上昇を妨げられます。

認証試験は必須

システムを稼働し始めたら、解像度、フレーム・レート、その他のビデオの使用をテストする専用の AV ツールは存在しますが、音声やデータ伝送に使う IP ベース LAN を構築する時と同じように、HDBase-T および IP ベースの AV システム用のケーブル配線基盤もテストする必要があります。実際、HDBaseT Alliance は、どのケーブルの種類を使用しようが、適切な TIA 規格への適合性をテストしなければならないと規定しています。

つまり、ケーブル・テストの必要性に関して言えば、HDBaseT のビデオでも IP ベースのビデオでも違いはありません。どちらかのシステム用にカテゴリー 6A ケーブルを使用する場合には、エイリアン・クロストークのテストも含め、TIA カテゴリー 6A 規格に基づいて認証を行う必要があります。メーカーの保証を受けたい場合には、その必要性が特に高まります。HDBaseT および IP ベースのどちらの AV システムの展開にも、フルーク・ネットワークスの DSX CableAnalyzer™ シリーズ・メタル配線認証ツールなどのメタル線ネットワーク・テスターを使用できます。