減衰およびOTDRイベントのデッドゾーンの説明 - OptiFiber Pro

はじめに

高密度環境におけるマルチモード・ファイバー配線をテストするには、密集したコネクターをテストできる特殊な OTDR が必要になります。これらのコネクターは、高い挿入損失と反射率を生じさせます。このため、OTDR を使用したテストは、最高水準の空間分解能を有する OTDR でなければ難しくなります。


この種の OTDR の心臓部には、パルス・レーザーとアバランシェ・フォトダイオード(APD)の 2 つのコンポーネントがあります。電子装置の設計に加え、それに増して重要な APD の種類が、デッドゾーン・パフォーマンスを決定します。


すべての OTDR サプライヤーは、デッドゾーンの仕様を提示しています。しかし、デッドゾーンを検討するにあたって、考慮すべき点がいくつかあります。第一に、デッドゾーンの仕様が定められた環境を考慮する必要があります。第二に、反射率が高まるに従い、デッドゾーンがどのように変化するかが重要です。サプライヤーは、これを仕様に明記しません。そして第三に、実世界のファイバー・ネットワークにおいて、どのようなデッドゾーン・パフォーマンスが期待されるかです。

デッドゾーンの仕様

図 1 で示すように、減衰デッドゾーン(ADZ)とは、パルスの立ち上がりエッジから後方散乱光レベルの近似直線との偏差が 0.5 db 以内になる地点までの距離と定義されます。後方散乱光レベルは、トレース上のファイバーの減衰量を示す傾斜線です。デッドゾーンの仕様は通常、最短のパルス幅と最善のコネクター反射率といった最高条件の下で定められています。

ADZ 仕様の目的は、コネクターからどのくらいの距離を離れれば正確な損失測定を行えるかの目安を示すことです。この定義から、損失を測定するにあたって、デッドゾーンの距離分に相当するパッチコードを 1 つ前のコネクターに連結させることが考えられますが、実際には、これは正しくない場合があります。

図 2 が示すように、イベント・デッドゾーン(EDZ)は、反射波形のピークから両側に 1.5dB 下がった 2 点間の距離として定義されます。これは、線形領域における半値全幅のパルス幅を表します。このデッドゾーンの仕様も同じように、最短のパルス幅と最善のコネクター反射率といった最高条件の下で通常定められています。

 EDZ 仕様の目的は、コネクターからどのくらいの距離を離れれば正確な長さ測定を行えるかの目安を示すことです。この定義から、長さを測定するにあたって、デッドゾーンの距離分に相当するパッチコードを 1 つ前のコネクターに連結させることが考えられます。これは通常、両コネクターが EDZ の条件(-45 dB 反射率)を満たしている場合に限り正しくなります。どちらかのコネクターの反射率が変化すると、この定義は無効にあり、デッドゾーンが増大します。

どちらのタイプのデッドゾーンも、測定は通常、単一の高品質のコネクターで行われます。シングルモードの場合、-52 dB の反射率のコネクターが当てはまります。上図における「非飽和」とは、OTDR レシーバーで飽和および歪みを生じさせない低反射率のコネクターを意味します。反射率が高いと、「テーリング」と呼ばれる APD 固有の現象によりデッドゾーンが増大します。 

実際のデッドゾーンの適用例

お客様が期待する OTDR のパフォーマンスは、OTDR の仕様と合致しないことがあります。仕様は通常、脚注に明記されることが多い特定の条件下で定められます。 


OTDR について、かかる条件下で、デッドゾーンの仕様が近端の測定に限られると考えるべきです。デッドゾーンは、測定するファイバーの長さ全体にわたって一定であると考えてはなりません。デッドゾーンは、有限幅で放射されるパルスの作用であり、測定する長さが増すにつれ、幅が広くなります(幅の広いパルスは、より長い長さの測定に使われます)。デッドゾーンは、後で説明されるいくつかの例外を除き、反射率の増加とともに増大します。デッドゾーンの仕様は、ユーザーが OTDR パフォーマンスを比較できるように提供されることがあります。しかし、デッドゾーンの仕様は、単一イベントを対象としており、ネットワーク・テストのために定義されるものではありません。

より高機能の OTDR は、トレースやイベント・テーブルを表示するだけでなく、テストされているファイバー配線のグラフィカルな「マップ」も提供します。当初は、プレミスベースの OTDR に導入されたマッピング機能も、現在では多くのサプライヤーで人気を得ています。マッピング情報は、イベント・テーブルを作成するために使用される同じ解析情報から抽出しているものの、より使いやすい概要図として表示されます。アナライザー・ソフトウェアは、密集したコネクターを測定する場合に、能力の限界に達します。それぞれのコネクターの反射率が異なる(傷のないコネクターの次に傷のついたコネクターがあるなど)場合、特にそう言えます。

例えば、イベント・デッドゾーンに対する期待は、次のようなものが考えられます。イベント・デッドゾーンの距離が 1 メートルだとします。ファイバー・ネットワークでは、1 メートル のパッチ・コードがより長い 2 本のコードの間に挟まれています。ユーザーは、OTDR が 1 メートルのパッチコードを発見し、その位置を特定して、損失と反射率を測定することを期待します。OTDRは、上記の仕様の条件が満たされる場合(つまりどちらの反射率も制限内にある)のみ、1 メートルのパッチコードの長さを測定できます。イベント・デッドゾーンは、反射率ピークの位置のみを特定できるのであって、損失を測定できないことを覚えておく必要があります。

別の例として、減衰デッドゾーンの距離が 2 メートルとします。ファイバー・ネットワークでは、2 メートル のパッチ・コードがより長い 2 本のコードの間に挟まれています。ユーザーは、パッチコードの損失を測定できることを期待します。各反射点の後に十分な後方散乱光があれば、OTDR は測定できます。

図 3 では、1.94 メートルのコードの最初のコネクターの位置、損失、そして反射率が特定されています。2 つのコネクターの距離が近いため、最初のパルスの後の後方散乱光が限られている可能性があります。2 つめのパルスは、最初のパルスの後方散乱光と結合することも考えられます。その結果、損失は 2 つめのパルスの後方散乱から最初のパルスの前にある後方散乱光の終わりまでの間で測定されます。つまり、実際に測定されるのは、2 つのパルスの損失になります。

図 4 では、1.94メートルのパッチコードの遠端側の 2 つめのパルスは、識別できずに「Hidden」(隠れた)イベントとしてラベル付けされています。これは、2 つめのパルスの開始点が最初のパルスの後方散乱光により隠れてしまうからです。そのため、このイベントを完全に測定することはできません。

図 5 は、パルスの間に十分な距離があれば、両反射点でのコネクタの減衰量を簡単に測定できることを示しています。これらの条件下で、OTDR の仕様に基づいた減衰デッドゾーンを検証することができます。

その一方で、2 本の長いファイバーの間に 2メートルのパッチコードがあるファイバー・ネットワークであった場合、最初のコネクターの後に直線近似を行うのに十分な後方散乱光(反射)がないため、信頼できる測定が困難になります。

図 6 は、2 つのコネクターが、減衰デッドゾーンの仕様の限界の距離に配置されている例です。熟練した OTDR ユーザーであれば、両方のパルスの減衰デッドゾーンを手動で測定できるかもしれません。その一方で、解析ソフトウェアであれば、最初のパルスの開始点と 2 つめのパルスの終了点の後方散乱光の差異でもって、最初のコネクター(パルス)の損失を測定するかもしれません。

フォトダイオード

1 つのフォトダイオードが 2 つの波長を測定するように OTDR が設計されることがよくあります。OTDR で一般的に使われる InGaAs フォトダイオードは、シングルモード・テストにおいて、1310nm と 1550nm の波長を検出できます。マルチモード・テストの場合、通常は 2 つの選択肢があります。1 つめは、850nm と 1300nm の両方に InGaAs フォトダイオードを使うオプションです。InGaAs は 1300nm の波長に対して高い感度を示すものの、850nm の波長に対しては感度が低い(ADP サプライヤーが明記しないことが多い)のが特徴です。2 つめのオプションは、1300nm マルチモード用に InGaAs、850nm マルチモード用に Si(シリコン)と、2 つのフォトダイオードを使うことです。

 

Si は 850nm に高感度だけでなく、InGaAs デバイスよりも高い内部利得機能(APD の特性)を備えています。OTDR で使用されるフォトダイオードは、増倍率と呼ばれる内部利得を有します。この内部利得は、装置のダイナミック・レンジに関係してくる信号対ノイズ比を大幅に向上させます。例えば、InGaAs APD の増幅率が 30 だとすると、Si APD は 70 だとします。これはつまり、特定の後方散乱光レベルにおいて、より幅の狭いパルスを使用することで、空間分解能を向上させられることを意味します。

InGaAs および Si APD のデッドゾーンと反射率の比較

すでに述べた通り、一般的にデッドゾーンが増大すると、反射率も高まります。これは、InGaAs フォトダイオードを使う時に特に問題となります。Si の方が断然いいのです。

下図は、Si APD または InGaAs APD のいずれかを使用する 2 つの OTDR から取得したデータで作成されています。InGaAs のデータは、波長 1550 nm で取得したものではあるものの、850 nm も含め、どの波長でも同種のデッドゾーン反応になります。850 nm と 1310 nm で、類似のパルス幅が使用されています。

下のデータは、OTDR で一般的に使われる InGaAs フォトダイオードを使用し、1550 nm でのデッドゾーンとコネクター反射率の関係を表しています。図 7 の最初のグラフでは、一般的な UPC コネクターの反射率(-45 dB)からより反射率の高いコネクター(汚れているコネクター)に推移した時の波長 850 nm におけるイベント・デッドゾーン(EDZ)と減衰デッドゾーン(ADZ)を示しています。

EDZ が反射率の影響を受けないことがデータから分かります。これは、非飽和ピーク未満で測定が行われているためです。ピークが飽和する(頂上が平坦になる)と、EDZ は増大するものの、これは OTDR の設計に関係してきます。ADZ の場合、2 m から 2.75 m まではデッドゾーンが徐々に大きくなっているものの、反射率が -26 dB から一気に拡大し、-25 dB の時は 4.5 m にも達します。この範囲では ADZ が拡大しますが、図 8 で示すように、InGaAs APD を使用した場合よりも良いと言えます。

図 8 では、InGaAs APD を使用した場合の反射率増加に伴う波長 1550 nm デッドゾーンのパフォーマンスを示しています。このグラフでは、一般的な UPC コネクターの反射率(-51 dB)からより反射率の高い(汚れている)コネクターの反射率(-30 db)に推移した時の EDZ と ADZ を示しています。EDZ は反射率の影響を受けないものの、15 dB の反射率の範囲にわたり、ADZ は 4.5 m から 5 m と徐々に拡大し、 -30 dB では 30 m を超えてしまいます。ADZ は、反射率が増加する限り、増大し続けます。InGaAs APD を使用するシングルモード OTDR はすべて、複雑な対策を行わない限り、この現象に悩まされることになります。

概要

InGaAs APD と比べ、Si APD を使用する OTDR は、850 nm でのマルチモード・ファイバー試験で優れたパフォーマンスを発揮します。Si APD は優れた信号対ノイズ比を有するため、ファイバー配線に対して、幅の狭いパルスを使用した調査と解析が勧められます。Si APD は、コネクターでの高い反射率によって生じる過負荷を受けた時、テーリングの影響をあまり受けません。高反射率は、ファイバー・ネットワーク試験で OTDR が発見する最もよくある問題の一つです。Si APD を使用する OTDR は、特に高分解能用途において、他の種類の OTDR よりも優れたパフォーマンスを発揮することがでデータが証明しています。

ユーザーが OTDR サプライヤーが提示する仕様を比較する時、高額な OTDR が高性能ではあったとしても、高反射率の下で評価を行わない限り、Si APD が使用されているかは明らかではありません。