ケーブル・テスト 101:損失バジェットの算出方法|フルーク・ネットワークス

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ケーブル・テスト 101:損失バジェットについて

マーク・マリンズ

金銭面において、企業の財務担当者は予算を目標内に留めるためにやかましく言ってくる一方で、光ファイバーの観点から見た損失バジェット性能を守ることは、それよりもはるかにネットワーク・パフォーマンスの向上に影響を及ぼします。つまり、ダウンタイムを回避することで、最終的にはその企業の収益に影響を及ぼすのです。

損失バジェットはどのように定義されるのでしょうか 、また確実にバジェット内に収めるためにはどうすればよいのでしょうか?

損失バジェットとは

構成要素 - 損失バジェット

デシベル (dB) で表記される損失バジェットは、ケーブルの長さに沿って発生する信号の損失量です。これは電気やデータなどあらゆる種類の伝送において自然に発生する現象です。ケーブルが長いほど損失は大きくなります。コネクターやスプライスなどの接続箇所でも損失が発生します。

損失バジェットは、「損失」と省略して呼ばれることが多いため、混乱が生じることがあります。パラメータの正式名は「挿入損失」ですが、さらに分かりにくいことに、挿入損失は減衰とも呼ばれることがあります。実際、以前の規格では「減衰」として記載されていましたが、これはあらゆる信号強度の低下について使用される一般用語であるため、挿入損失に変更されました。

損失が高すぎると、信号は適切に遠端に到達しません。これを防ぐために、光ファイバー・アプリケーションには、それぞれ異なる最大挿入損失要件が設けられています。ケーブル配線設備がアプリケーションの最大仕様を超えないようにするには、設計の早い段階で損失バジェットを決定する必要があります。

必要な算出要素

損失バジェットは、光ファイバー、コネクター、スプライシング、スプリッター、カプラーなど、チャネル内すべての損失要素で構成されます。送信機と受信機の違いに基づいて、機器メーカーの仕様ごとに機器を考慮する必要があります。また、送信機の経年変化による伝搬損失の発生にも考慮して、余裕を持った算出が必要になります。

挿入損失は長さと直接関係するため(アプリケーションごとに規格ベースの距離制限があるのはこのためです)、チャネル内すべてのケーブルの長さをバジェット計算に含める必要があります。ケーブル長が短い場合、損失は少なくなります。たとえば、レーザー用に最適化された OM4 マルチモード・ケーブルの標準伝送損失は、850nm 波長で 3dB/km です。これは 0.003dB/m ということです。つまり、ケーブルの長さが 50 メートルの場合、損失は約 0.15dB、100 メートルでは 0.3dB になります。

損失バジェットの構成要素。出典:FOA (光ファイバー・アソシエーション:The Fiber Optic Association)
損失バジェットの構成要素。出典:FOA (光ファイバー・アソシエーション:The Fiber Optic Association)

また、ケーブル配線設備のすべての接続部分で発生する損失も計算に含める必要があります。メーカーによってコネクターの仕様が提供されます。この値は、コネクターを高品質の基準コネクターに嵌合して行う工場試験に基づいているため、使用するコネクターを同様の高品質コネクターに嵌合することが重要になります。TIA 規格ではコネクターの最大挿入損失を 0.75dB に規定していますが、ほとんどのメーカーのコネクターの標準挿入損失は 0.2~ 0.5dB です。

損失バジェットの算出には、ケーブル配線設備のすべてのスプライスも含める必要があります。マルチモード・スプライスの場合は 0.1dB と低損失ですが、TIA 規格は最大値を 0.3dB に規定しています。スプライスの質は技術者の技量によってばらつきがあるため、この値は損失バジェットの算出に役立ちます。

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バジェット内であることを確認する方法

まず、実行するアプリケーション、および同じケーブル配線設備で将来実行する可能性のあるアプリケーションの最大挿入損失を把握する必要があります。高帯域幅を要するアプリケーションの損失要件はより厳しくなります。たとえば、10 Gb/s マルチモード (10GBASE-SR) アプリケーションの最大チャネル挿入損失は、400 メートルの OM4 マルチモード・ファイバーで 2.9dB ですが、40 Gb/s マルチモード (40GBASE-SR4) アプリケーションの場合は、わずか 150 メートルの OM4 で 1.5dB しか許容されません。こういった厳しい要件を満たすには、損失バジェット内に収めることがこれまで以上に重要になります。

例を見てみましょう。光ファイバー損失が 3.0dB/km とすると、150 メートルの OM4 光ファイバーでは約 0.45dB の損失が発生します。10GBASE-SR アプリケーションの場合、コネクター、スプライス、その他の構成要素で許容される損失は 2.45dB (2.9dB – 0.45dB) になります。40GBASE-SR4 アプリケーションの場合は、わずか 1.05dB (1.5dB – 0.45dB) です。チャネルに 0.3dB コネクターを 4 つ追加すると、10GBASE-SR の合計バジェットは 1.65dB (0.45dB + 1.2dB) になり、まだ 1.25dB の十分な余裕があります。しかし、40GBASE-SR4 アプリケーションでは、ケーブルとコネクターで合計 1.65dB の損失が発生すると、0.15dB ほどバジェットを上回ります。この場合は、チャネルのコネクター数を減らすか、または 0.2dB の低損失コネクターを選択する必要があります。

さらに、損失バジェットは常に余裕が少なくなるため、少し控えめにして余裕を残すようにします。特に、現場で終端処理やスプライシングを行う場合は、エアギャップやファイバー・コアの軸ずれなどの損失を伴う敷設上のばらつきが発生する可能性があります。ケーブル配線設備内の再構成、修復、またはスプライスの劣化への対応も考慮し、十分な余裕を持つ必要があります。また、チャネル両端のコネクターも損失バジェットに含めることが重要です。チャネルのテストを行う際、これらの両端のコネクターの損失を含めるために、テスト基準コードはこれらのコネクターと嵌合されます。

光ファイバー・アプリケーションの各規格では、さまざまな光ファイバーのタイプに応じて距離制限が規定されています。したがって、アプリケーションの損失リミットと距離制限の両方を満たす必要があります。詳細についてはこちらをご覧ください。

損失バジェットの算出方法に関わらず、バジェット内であることを確認する唯一の方法は、フルーク・ネットワークスの CertiFiber® Pro などの光損失テスト・セットを使用し、敷設後に Tier 1 テストを行って、チャネルの挿入損失を計測することです。そして、損失バジェットを継続的に改善するためのベスト・プラクティスは、設計段階で実際のテスト結果と算出値を比較することです。


 
 
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