マルチファイバー・プッシュオン(MPO)コネクター

MPO コネクターはデータ・センターに不可欠です

マルチファイバー・プッシュオン (MPO) コネクターとは、複数の光ファイバーを組み込んだファイバー・コネクターです。これらのコネクターは、主にデータ・センター環境で、バックボーン配線の複数のファイバーを統合し、複数のファイバーで信号を送受信して高速化を実現するパラレル光アプリケーションをサポートするために使用されます。

 

内容

 

MPO コネクターとは?

MPO コネクターは、もともとマルチファイバー・リボン・ケーブルに使用するために導入されたもので、単一のフェルールにファイバーが直線状に配列されているのが特徴です。2 芯以上のファイバーを持つアレイ・コネクターと定義されていますが、一般的なデータ・センター・アプリケーション用に 8 芯、12 芯、16 芯、または 24 芯で提供されています。32 芯、48 芯、60 芯、72 芯など、より芯数の多いファイバーもありますが、これらは通常、大規模な光スイッチ内の特殊な超高密度マルチファイバー・アレイで使われます。8 ~ 16 芯のファイバーの MPO では 1 列のファイバーが使用されますが、24 芯以上の高密度 MPO では複数列のファイバーが使用されます。

MPO コネクターには、ファイバーを傷つけないように適切に嵌合するためのオス(ピン付き)とメス(ピンなし)があります。MPO の機器ポートはすべてオスであるため、機器に接続する MPO ケーブルはすべてメスのコネクターでなければならないことにご注意ください。また、MPO コネクターにはキーがあり、最初のファイバー位置を示す白いドットが付いています。これは、各送信ファイバーが正しい受信ファイバーに対応するよう、適切な極性を確保するのに役立ちます。キーの位置は MPO コネクターによって異なり、8 芯、12 芯、および 24 芯 MPO のキーは中央にあり、16 芯および 32 芯 MPO コネクターのキーは左にオフセットされています。

キーのドット位置でオスとメスの MPO コネクターのアラインメントを示す図

MPO コネクターの構造

MPO コネクターの代わりに、「MTP コネクター」の用語が使われる場合もあります。MTP は、US Conec 社の MPO コネクターに使われている同社の登録商標です。MTP コネクターは MPO 規格に完全準拠しており、US Conec いわく、アラインメント、耐久性、パフォーマンス向上のために高精度に作られた MPO とのことです。MTP は技術的には MPO コネクターであるため、ここからは MPO コネクターとだけ呼ぶことにします。

 

MPO 認定と規格

他の規格ベースのコネクター・インターフェースと同様、MPO コネクターのメーカーは、嵌合互換性の規格に従わなければなりません。MPO コネクターの場合、オス/メス・インターフェースのピンやガイド穴の寸法など、コネクターの物理的特性を指定した IEC 61754-7 や EIA/TIA-604-5 (FOCIS 5) 規格などがあります。これら規格は、規格に準拠したプラグやアダプターが相互に嵌合可能で、一定水準のパフォーマンスを満たすことを保証します。

嵌合互換性の他にも、MPO コネクターは光ファイバー・インターフェース規格の IEC PAS 61755-3-31 で規定される特定の端面形状のパラメータを満たさなければなりません。これには、アレイ内のすべてのファイバーおよび隣接ファイバーの研磨角度、突出し量、ファイバー高さの最大差異などが含まれます。コネクターの全体的なパフォーマンスは、これら機械的特性を正確に制御できるかどうかにかかっています。例えば、ファイバー高さの差異を超えてしまい、アレイ内のファイバーが同じ高さでなかった場合、一部のファイバーが適切に嵌合しません。これは、挿入損失リターン・ロスに大きく影響する可能性があります。

 

MPO アプリケーション

MPO コネクターは、アクティブな機器間に事前に終端処理されたプラグアンドプレイのバックボーン・トランク・ケーブルを展開する手段として、データ・センター全体のデュプレックス・ファイバー・アプリケーションで使用されています。デュプレックス・バックボーン・リンクで使用される MPO 終端トランク・ケーブルは、個々のデュプレックス・ケーブルを使用する場合に比べ、経路の占有スペースが少なく、ケーブル管理が容易で、迅速に展開できます。デュプレックス・バックボーン・アプリケーションに使用する場合、両側に 12 芯または 24 芯の MPO コネクター備えたトランク・ケーブルがバックボーンのパーマネント・リンクを形成し、MPO-to-LC カセットまたは MPO-to-LC ハイブリッド・パッチ・コードを通して、パッチ・パネルで 6 または 12 の デュプレックス・ファイバー・コネクターに変換されます。

MPO コネクターは、伝送速度を向上させる手段として、複数のファイバーで送受信する、パラレル光ファイバー・アプリケーションの事実上のインターフェースでもあります。MPO を必要とする最初のパラレル・アプリケーションの 1 つは、40 ギガおよび 100 ギガのマルチモード・アプリケーション(40GBASE-SR4 および 100GBASE-SR4)です。8 芯のうち、4 芯を使って送信、4 芯を使って受信を行い、伝送速度は 1 レーンあたり 10 Gbps または 25 Gbps です。これらの 8 芯のデータ・センター・アプリケーションは、8 芯 MPO コネクターで最もよくサポートされますが、12 芯 MPO コネクターは、中間の 4 芯ポジションが未使用の状態で使用することができます。

エンコーディング技術の進歩により、現在では 1 レーンあたり 50 Gbps と 100 Gbps での伝送が可能になり、8 芯 MPOは、50 Gbpsまたは 100 Gbps のいずれかで 4 芯を使って送信、4 を使って受信する 200 Gbps および 400 Gbps のパラレル光アプリケーションにも使用されています。800 ギガのアプリケーションでは、16 芯 MPO を使用します。8 芯を使って送信、8 芯を使って受信を行い、伝送速度は 100 Gbps です。レーンあたり 200 Gbps の技術は、200 Gbps で 4 芯を使って送信、4 芯を使って受信する 8 芯 MPO を使用して 800 ギガをサポートでき、1.6 テラビットは 200 Gbps で 8 芯 を使って送信、8 芯を使って受信する 16 芯 MPOを使用することができます。速度がますます高まる中、MPO コネクター・インターフェースの時代はまだまだ続くことでしょう。

一方の端に MPO コネクター、もう一方の端にデュプレックス・コネクターを備えたブレークアウト・ケーブルは、1 つの高速スイッチ・ポートが複数の低速デュプレックス・スイッチまたはサーバー・ポートに接続するブレークアウト・アプリケーションに最適です。ブレークアウト・アプリケーションは、スイッチ・ポート密度とポート利用率を最大化することにより、コスト削減に貢献します。たとえば、8芯 MPO インターフェースを備えた 1 つの 100 ギガ・スイッチ・ポートで、4 台の 25 ギガ・サーバーに接続できます。

 

超小型フォーム・ファクター (VSFF) MPO

800 ギガのパラレル光ファイバー・アプリケーション(および将来の 1.6 テラビット・アプリケーション)の最初のバージョンでは、16 芯 MPOが使用されることになっているため、大手コネクター・メーカー各社は、従来の 16 芯 MPO の約 3 倍の密度を提供する超小型 16 芯 MPO を発売しました。これは、ハイパフォーマンス・コンピューティング環境において、より高いスイッチ・ポートおよびパッチ・パネル密度を実現し、省スペース化を図る上で非常に重要です。VSFF の 16 芯 MPO コネクターには、センコーの SN-MT と US Conec の MMC-16 があります。サイズの違いを考慮すると、216 芯の SN-MT または MMC-16 コネクターは、 80 個の従来の16 芯 MPO コネクターと同じスペースに収まります。

 

従来の MPO コネクターと VSFF MPO コネクターの比較画像

新しい VSFF 16 芯 MPO コネクターは、従来の 16 芯 MPO コネクターの約 3 分の 1 のサイズです。これによって、高性能コンピューティング MPO コネクター構造の密度が向上します。出典:センコーとUS Conec

 

MPO のクリーニングおよび検査

すべてのファイバー端面と同様、MPO コネクターも接続前に検査し、必要に応じてクリーニングしなければなりません。実際、表面積がより大きい分、MPO コネクターの方がクリーニングと検査がより大きな懸念事項となります。このような広い表面積をクリーニングする場合、同じアレイ内の別のファイバーに汚れがつきやすくなります。したがって、この配列が大きいほどリスクが高くなります。

16 芯や 24 芯のファイバー MPO コネクターなどのようにファイバーの芯数が多いと、ファイバーの高さの差異を制御することがより困難になります。ファイバー間のわずかな高さの違いでも、すべてのファイバーを適切かつ均等にクリーニングすることが難しくなります。そのため、検査を行い、必要に応じてクリーニングして、再度検査を繰り返すことが重要になるのです。

ファイバー端面の検査については、IEC 61300-3-35「光ファイバ接続デバイス及び光受動部品の基本試験及び測定手順」に、検査の合否判定から人間の主観性を排除し、論争を回避するための清浄度に関する詳細な等級基準が記載されています。IEC 61300-3-35 は、各種コネクターの種類やファイバー・サイズごとに、コア、クラッド、接着剤、コンタクト部を含む端面の各ゾーンのひっかき傷の数と大きさ、および欠陥に基づいて、ファイバー端面の清浄度を認証します。

MPO コネクターのクリーニングと検査を行う場合、MPO 専用に設計されたクリーナーと検査装置を使用することで、時間を節約し、精度を向上させることができます。フルーク・ネットワークスの FI-3000 FiberInspector Ultra は、MPO コネクターを検査し、IEC 61300-3-35 に準拠した自動合否判定結果を提供します。また、MPO コネクターの端面をこれまで以上に簡単にクリーニングできる、MPO Quick Clean™ Fiber Optic Cleaning Kits もご用意しております。

 

フルーク・ネットワークス FI-3000 FiberInspector Ultra および Quick Clean クリーナー・ツールの画像 フルーク・ネットワークス FI-3000 FiberInspector Ultra および Quick Clean クリーナー・ツールの画像

FI-3000 FiberInspector Ultra (左) は MPO コネクターを検査し、IEC 61300-3-35 手順に準拠した自動合否判定結果を提供します。MPO Quick Clean Cleaner(右)は、MPO コネクターのクリーニング専用です。

 

MPO の極性

ファイバー・リンクが正常にデータを送信するには、ケーブルの一端の送信信号(Tx)がもう一端の受信側(Rx)と一致する必要があります。どのような極性も、接続を維持することを目的としていますが、マルチファイバー MPO コンポーネントを扱う場合には、これが複雑になります。

MPO ケーブルについては、業界標準によって 3 つの異なる極性方式が定められています。

 

  • メソッド A では、一端がキーアップ・コネクター、もう一端がキーダウン・コネクターとなるType A の MPO トランク・ケーブルが使用され、位置 1 にあるファイバーが、反対側でも位置 1 になります。デュプレックス・アプリケーションにメソッド A を使用する場合、終端のパッチ・コードで反転接続を行う必要があります。

  • メソッド B では、反転接続となるように、両端ともキーアップ・コネクターが使用されます。つまり、位置 1 にあるファイバーが、反対側では位置 12 に、位置 2 にあるファイバーが、反対側では位置 11 になります。デュプレックス・アプリケーションの場合、メソッド B は両端でストレートの A-B パッチ・コードを使用します。

  • メソッド C では、メソッド A と同じように一端がキーアップ・コネクター、もう一端がキーダウン・コネクターとなりますが、反転はケーブル内で行われます。つまり、位置 1 にあるファイバーは、反対側では位置 2 になり、位置 2 にあるファイバーは位置 1 になります。この方式はデュプレックス・アプリケーションでバックボーン接続に MPO トランク・ケーブルを使用する場合に有効ですが、パラレル・ファイバー・アプリケーションをサポートしないため、推奨されません。

MPO ケーブルに使用される 3 つの異なる極性方式を示す図

MPO ケーブルに使用される 3 つの異なる極性方式。

3 つの異なる極性方式とそれぞれに合わせて正しいパッチ・コードを使用する必要性があることから、展開時の間違いはよく起こります。フルーク・ネットワークスの MultiFiber™ Pro を使えば、パッチ・コード、パーマネント・リンク、そしてチャネルを簡単にテストして、極性が正しいことを確認できます。

 

MPO ケーブルのテスト方法

データ・センター内の他のファイバー・リンクと同じように、MPO コネクターを使用するファイバー・リンクは、挿入損失のバジェット内に収まるようにテストしなければなりません。これは、MPO を必要とするより高速な 40、100、200、および 400 ギガのパラレル光ファイバー・アプリケーションに特に当てはまります。これらアプリケーションでは、損失バジェットがはるかに低いため、可能な限り高いテスト精度を維持することが重要です。

オンボードの MPO コネクターを備えた MultiFiber Pro テスターが登場する以前は、MPO ベースのファイバー・リンクは従来のデュプレックス・ファイバー・テスターでテストされていました。これは、複数のファイバーを一つのファイバー・チャネルに分ける MPO-to-LC ファンアウト・コードを使用し、テスト対象のファイバー・ペアの両端に接続する前に、テスト基準コードを検証する必要があるため、非常に時間がかかる作業でした。この複雑なテストは、大きな不整合性を生じさせ、作業中にすべてのファイバーをきれいに保つのを困難にさせました。

MPO コネクターのすべてのファイバーを同時にスキャンできるオンボード MPO コネクター搭載の MultiFiber Pro のようなテスターは、複雑さを解消し、デュプレックス・テスターよりも 90% 速くテストできます。実際、IEC TR 61282-15 Ed1 設計ガイド「Cable plant and link – Testing multi-fibre optic cable plant terminated with MPO connectors」では、これらシステムをテストするテスターは、MPO インターフェースを備えていなければならないことを規定しています。

 

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