データ・センターがネットワークを動かす
データ・センターはあらゆるエンタープライズ・ネットワークの中心であり、膨大な量の重要情報の伝送、アクセス、保存を可能にします。
このページに記載されていること
データ・センターのケーブル配線とは?
データ・センターのケーブル配線は、企業のローカル・エリア・ネットワーク(LAN)をスイッチ、サーバー、ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)、およびすべてのアプリケーション、トランザクション、通信をサポートするその他のアクティブな機器に接続します。またそれは、LAN がインターネットや施設外の他のネットワークへのアクセスを提供するサービス・プロバイダー・ネットワークに接続される場所でもあります。
データ・センターのケーブル配線規格
ANSI/TIA-942、ISO/IEC 24764、ANSI/BICSI 002 などの規格は、データ・センターの設計と展開に関する最小限の推奨事項を提供しています。これには、経路とスペース、バックボーンと水平ケーブル、冗長性と可用性、ケーブル管理、および環境の検討事項が含まれます。
これらの規格は、次のような、データ・センターの特定の機能領域についても概説しています。
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• 引込室 (ER): ER はデータ・センターの内部または外部に設置されるもので、引込施設と呼ばれることもあります。これは、サービスがデータ・センターに入る場所であり、サービス・プロバイダー・ネットワークや、キャンパス環境内の他の建物へのバックボーン・ケーブルへの分界点を提供します。
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• 主分配エリア (MDA): 配電の中心ポイントとして、MDA には、LAN、SAN、データ・センター内の他のエリア、施設内の各通信室 (TR) をつなげるコア・スイッチとルーターが設置されています。
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• 水平分配エリア (HDA): HDA は、機器分配エリア (EDA) のサーバーを MDA のコア・スイッチに接続するための分配ポイントです。MDA からのファイバー・バックボーン・アップリンク・ケーブルは、アグリゲーション・スイッチとアクセス・スイッチを接続するクロスコネクトまたは相互接続内のファイバー・パッチ・パネルのこの部分で終端します。ほとんどのデータ・センターには少なくとも 1 つの HDA がありますが、アクセス・スイッチが同じキャビネット内のサーバーに直接接続されるトップ・オブ・ラック (ToR) アーキテクチャでは、HDA は不要です。
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• 機器分配エリア (EDA): サーバーはここに設置されます。これらのサーバーは、メタル線またはファイバー・パッチ・パネルで終端された水平ケーブル、または同じキャビネット内の ToR スイッチへの直接接続を介して、HDA 内のスイッチに接続されます。
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• 中間分配エリア (IDA): 中間ディストリビュータと呼ばれることもあるこれらのオプションのスペースは、一般的に複数のフロアや部屋を持つ大規模なデータ・センターに見られ、MDA からアグリゲーション・スイッチを介してさまざまな HDA や EDA にファイバー・リンクを分配します。
- • ゾーン分配エリア (ZDA): このようなオプションのスペースは、通常、エンタープライズ・データ・センターにはありません。ZDA にはアクティブな機器は含まれませんが、HDA と EDA 間の水平ケーブル配線内の統合ポイントとして機能し、将来の拡張や再構成を容易にします。
この図は、TIA-942 データ・センター規格に基づくもので、バックボーン(青)と水平(赤)ケーブル配線で接続されたさまざまなスペースを示しています。
データ・センターの主要課題
データ・センターは企業の運営に不可欠であり、増え続けるミッションクリティカルな機器を収容しています。現在および将来のニーズに対する信頼性とパフォーマンスを確保するためには、いくつかの重要な検討事項と課題があります。その中でも比較的重要な事項をいくつかご紹介します。
拡張性とスケーラビリティ
企業がデータ主導の世界で競争しようと努めるにつれて、クラウドやコロケーション・データ・センターの数が増えていきます。新しいシステムやサービスをより迅速に展開する手段を提供することで、企業は変化するニーズに迅速に対応し、社内のエンタープライズ・データ・センターをアップグレードすることなく対応能力を拡張することができます。多くの企業では、IT リソースの一部を社内または安全なコロケーション・データ・センターに置き(特にデータ管理を維持する必要がある場合)、他のリソースをクラウドに置くというハイブリッド IT のアプローチを採用しています。クラウド・リソースは SaaS (Software-as-a-Service) を使用し、コロケーション・データ・センターは通常 IaaS (Infrastructure-as-a-Service) を提供します。
冗長性と可用性
冗長性には、コンポーネントのいずれかが故障しても機能性を確保できるように、コンポーネント(機器、リンク、電源、経路など)を冗長化することが含まれます。これは、多くの場合「N システム」を使用して定義されます。「N」はデータ・センターが機能するために必要なコンポーネント数のベースラインです。
- ○ N+1 冗長性とは、機能するために必要なコンポーネントよりも 1 つ多いコンポーネントを持つことを意味します。
- ○ 2N 冗長性とは、必要なコンポーネントの数を2倍にすることを意味します。
- ○ 2N+1 冗長性は、その 2 倍プラス 1 です。
Uptime Institute のティア・レベルは、データ・センターにおけるさまざまなレベルの可用性に必要な「N」レベルを規定します。The BICSI 002 の可用性クラス・システムも N レベルに言及しています。
電力、冷却、効率
持続可能性への注目が高まる中、Green Grid では、データ・センター内で消費される IT エネルギー単位当たりの温室効果ガス (GHG) 排出量を測定する二酸化炭素使用効率性 (CUE) 指標も導入しています。また、データ・センターで使用される水(水冷、加湿など)と IT 機器のエネルギー消費量の比率を測定する水使用効率性 (WUE) 指標も導入しています。
冷却は、許容可能な機器の動作温度を維持し、機器の寿命や信頼性に悪影響を与えるホットスポットを防ぎます。ASHRAE は、データ・センターの動作温度範囲を 18° ~ 27° C (64° ~ 81°F) と推奨しています。冷却は効率に影響を与え、データ・センターの総エネルギー消費量の 30% ~ 50% を占めます。
- ○ 冷たい吸気と熱い排気が混ざらないようにすることで、より高い還気温度を可能にし、データ・センターの冷却システムの効率を向上させ、電力消費の多い空調ユニットの過剰供給を防ぎます。
- ○ データ・センターで熱気通路/冷気通路構成を使用することは、熱気と冷気の混合を防ぐ受動的な方法です。これは、キャビネットの列を並べることで、冷気の吸入が機器の前面で最適化され、熱気が機器の背面から冷却還気システムに排気されるようにするものです。
処理能力の向上と発熱量の増加に伴い、一部のデータ・センターでは、熱気と冷気の混合を防ぐより効果的な方法が必要とされています。
- ○ 受動封じ込めシステムは、ルーフパネルを使用して冷気通路をデータ・センターの他の部分から隔離(「冷気通路封じ込め」)、または縦型パネルを使用して熱気通路を隔離し、高温の排気を頭上の還気吹き出し口に戻す(「熱気通路封じ込め」)ことで、熱気通路と冷気通路を完全に隔離します。封じ込めシステムは、ファンを使ってキャビネットから高温の空気を熱気通路に引き込むこともできます。
- ○ 電力密度が極めて高いハイパフォーマンス・コンピューティング環境(ハイパースケール・データ・センターなど)では、より優れた熱伝導を実現するために液冷ソリューションが採用されています。これらのソリューションには、機器キャビネットの後部にある液体を充填したコイルを通過する際に高温の排気を冷却するリア・ドア熱交換器、冷水ループを循環する冷却水で機器を囲む液浸、CPU などの機器内の発熱部品に直接取り付ける小型のコールド・プレートに冷却水を送るコールド・プレート冷却またはチップ直下冷却などがあります。
データ・センターにおけるケーブル配線の検討事項
データ・センターの規模や種類、スイッチング・トポロジー、アプリケーションに関係なく、基盤となるケーブル配線インフラは、さまざまな機能エリアにわたるデータ・センター機器の接続に必要な信頼性の高い広帯域幅リンクを確保する上で極めて重要です。データ・センターのケーブル配線に関しては、いくつかの検討事項があります。
ケーブル管理
- ○ 高密度のケーブルを頭上に移動させることは、冷気の動きを妨げる床下通路でのケーブルの混雑を防ぐ戦略のひとつです。
- ○ キャビネット内では、水平および垂直ケーブル管理ソリューションにより、機器内および機器周辺のケーブルを適切に配線、整理し、適切なエアフローを維持することができます。
- ○ ファイバーよりも太く、気流を妨げる可能性のあるメタル線配線の解決策は、より細いゲージのメタル線パッチ・コードを使うことです。
- ○ 水平および垂直ケーブル管理は、適切な曲げ半径と張力緩和を維持するために非常に重要です。ケーブルの曲げ半径を超えたり、ケーブルに負担がかかったりすると、パフォーマンスが低下したり、リンクが機能しなくなる可能性があります。
ケーブル・テスト
- ○ ER、MDA、HDA 間のバックボーン・ケーブル・リンクは、ほとんどの場合シングルモードおよびマルチモード・ファイバーです。
- ○ HDA と EDA 間の水平ケーブル配線(スイッチとサーバーのリンク)は、カテゴリー 6A 以上のメタル線接続またはマルチモード・ファイバーを使用します。
- ○ EDA が ToR 構成を使用する場合、これらの接続には SFP+ または SFP2 二軸ダイレクト・アタッチ・ケーブル(DAC)が使用されることが多くなっています。SFP/QSFP モジュールをテストする際は、電力が適切に供給されていることを確認する必要があります。データ・センターの各機能エリアにおける一般的なテスト対象についての詳細は、無料のホワイトペーパー『データ・センター内 − テストの場所および対象』をダウンロードしてください。
ファイバー損失予算
ファイバー・アプリケーションが正しく機能するための挿入損失量の上限は業界標準で定められており、40GBASE-SR4 や 100GBASE-SR4 などさらに高速のアプリケーションではいっそう厳しい挿入損失要件が課せられます。
データ・センターでは機能領域と接続ポイント数との間の距離に基づいてファイバー損失予算を決定し、損失がこの要件内に収まるようにします。ファイバー損失予算を正確に決定するには、特定のベンダーのケーブルと接続の挿入損失値を知る必要があります。
基本のファイバー・テスト(ティア 1 認証)では、光損失試験セット (OLTS) を使用してファイバー・リンク全体の挿入損失をデシベル (dB) で計測します。ケーブル・メーカーがシステム保証を受けるには、ほとんどの場合、ティア 1 認証が必要です。また、特定の接続ポイントやケーブルの損失を把握できる光パルス試験器 (OTDR) を使用したティア 2 認証が必要な場合もあります。OTDR に続いて OLTS を使用することで、リンク全体の特性を評価し、最も正確な挿入損失試験を実現する完全な試験戦略を提供できます。
ファイバーの挿入損失予算内に収まるかどうかは、清浄度にも大きく依存します。これは、データ・センターにおけるファイバー関連の問題やテスト不合格の最大の原因が依然として汚染であるためです。ファイバー端面のコアに僅かな粒子が付着しただけでも、パフォーマンスを低下させる損失や反射の原因となります。したがって、データ・センターのファイバー成端においてクリーニングと検査が重要なステップとなります。
MPO ケーブル配線と接続
時間を節約し、複雑さを排除し、精度を向上させるには、MPO 対応ファイバー・テスターを使用して MPO ケーブル配線リンクをテストすることをお勧めします。
データ・センターのリンクが機能するためには、リンクの一方の端の送信信号がもう一方の端の対応する受信信号と一致するように、適切な極性を維持する必要があります。MPO 接続の場合、複数の送信ファイバーと受信ファイバーを正しく対応させる必要があるため、適切なファイバー極性の確保はより複雑になります。正しい極性をチェックする MPO ケーブル・テスターは、極性の間違いをなくすのに役立ちます。