ファイバー端面検査がより簡単に:IEC61300-3-35規格の主な変更点
2025 年 4 月 30 日 / 一般、 学習、インストールとテスト、アップグレードとトラブルシューティング
ネットワーク内のパッチ・コードや幹線ケーブル、テスターに接続する基準コードなど、コネクタを接続する前に必ず端面を検査・清掃し、再検査することが重要です。汚れたファイバー端面は、信号損失や反射を引き起こし、ネットワーク性能を低下させる恐れがあります。また、清掃済みのポートや高価なネットワーク機器に汚れを広げてしまう可能性もあります。
国際電気標準会議(IEC)が策定した61300-3-35規格は、ファイバー端面の検査を一貫して行うためのガイドラインです。ここでは、検査と清掃のワークフローをより簡素化できる最新の改訂版についてご紹介します。
IEC 61300-3-35規格とは何ですか?
IEC 61300-3-35規格では、ファイバー端面の目視検査において、異物、キズ、欠陥の観察と分類に重点が置かれています。この規格は、検査用顕微鏡の最低要件、検査手順、端面画像の定量的分析基準などを定めています。
すべての規格と同様に、61300-3-35規格でも改訂と更新が行われています。2009(第1)版では、ファイバー端面の品質を定量的に評価し、光学性能に影響を与える可能性のある表面欠陥(キズ、くぼみ、異物)の許容範囲を定める手法が導入されました。2015年に発行された第2版(61300-3-35:2015)では、ファイバー端面を4つのゾーンに分け、それぞれのゾーン内に存在するキズ(恒久的な表面の損傷)や異物(粒子や汚れ)の状態とサイズに基づいて、清浄度を評価する明確な基準が設けられました。ゾーンA(コア)、ゾーンB(クラッド)、ゾーンC(接着部)、およびゾーンD(接触部/フェルール)。特に、信号が通過するファイバーのコア部分(ゾーンA)には、最も厳しい要件が課されています。
IEC 61300-3-35:2015では、端面内の4つのゾーンにおけるキズおよび欠陥の状態とサイズに基づき、ファイバーの清浄度を評価しています。
IEC 61300-3-35:2015で概説されている清浄度基準は、コネクタの種類やファイバーのサイズによっても異なります。特に、シングルモード・ファイバーのようにコアが小さい場合、コア・ゾーン内にキズや異物が存在することは一切許容されていません。マルチモード・ファイバーの端面はコアが大きいため、3ミクロン(mm)以下のキズや、5 mm以下の欠陥が最大4つまで許容される場合があります。
こうした基準により、ファイバーの清浄度評価に一定の一貫性は生まれましたが、各ゾーン内のキズや欠陥を顕微鏡で手動で数えたり、測定したりする作業は、時間がかかる上に人為的ミスが起こりやすいという課題があります。フルーク・ネットワークスのFI-3000 / FI2-7300 FiberInspector™ Ultra CameraやFI-7000 FiberInspector™ Proのような自動化ソリューションでは、IEC 61300-3-35規格に基づいたアルゴリズム処理により、ファイバー端面を評価・認証し、自動で合否(PASS/FAIL)を判定します。
IEC 61300-3-35 第3版では、何が変わりましたか?
最新のIEC 61300-3-35:2022第3版における主な変更点のひとつは、ゾーンC(接着部)およびゾーンD(接触部)をPASS/FAIL判定基準から除外したことです。これは合理的な見直しであり、これらのゾーンに汚染があっても、コア部を通る光信号の伝送には一般的に影響を与えないためです。新たな規格では、まずゾーンD(接触部)全体を検査し、より重要なゾーンAおよびB(コアおよびクラッド)へ粒子が移動しないよう、移動性のある異物を除去することが推奨されています。複数回の清掃を行っても除去できない場合、その異物は「埋め込まれた欠陥」と見なされ、許容されるものとされます。その後、検査はゾーンA(コア)およびゾーンB(クラッド)へと進みます。これらのゾーンでは、引き続きキズや欠陥の大きさと数に基づいてPASS/FAIL判定が行われます。
矩形アレイ・コネクタ(たとえばMPOなどの多心プッシュオン・コネクタ)の場合、IEC 61300-3-35:2022では、各ファイバー端面のゾーンAおよびゾーンBを検査する前に、フェルール全体を検査し、移動性のある粒子を除去することが推奨されています。MPOコネクタは接触面が大きいため、フェルール上の異物が個々のファイバー端面に移動し、空隙を生じる可能性があり、それによって挿入損失や反射損失が増加する恐れがあります。複数回の清掃を試みてもフェルール上の異物を除去できない場合、それらは埋め込まれた欠陥と見なされ、許容されると判断されます。
MPOのフェルール全体を検査するために、IEC 61300-3-35では、少なくとも6.4×2.5 mmの視野範囲(LFOV)を備え、直径10 mmの異物を検出できる性能を備えた顕微鏡の使用が認められています。シングル・ファイバー・コネクタの接触ゾーン、ならびにすべての端面におけるコアおよびクラッド・ゾーンを検査するためには、視野範囲が少なくとも250 μmあり、直径2 μmの欠陥および幅3 μmのキズを検出可能な狭視野(SFOV)顕微鏡の使用が引き続き求められます。
IEC 61300-3-35:2022では、ゾーンAおよびゾーンBに関する具体的な基準も、わずかに緩和され、より明確に定義されるようになりました。以下のマルチモード・ファイバー端面に関する表に示されているように、前版ではゾーンA内において3 mmを超えるキズは一切許容されていませんでした。一方、最新の改訂版では、4 mm以下のキズが最大4本まで許容され、5 mmを超えるキズは引き続き許容されません。最新の改訂版では、クラッド・ゾーンの全体的なサイズもわずかに縮小されています。これは、クラッドの端部に付着した汚染物が光信号に与える影響がごくわずかであると判断されたためです。
IEC 61300-3 マルチモード・ファイバー端面の検査基準 |
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ゾーン |
欠陥 |
傷 |
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2015年、2版 |
2022年、3版 |
2015年、2版 |
2022年、3版 |
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A:コア |
4 ≤ 5 µm |
制限なし < 2 µm 4 ~ 2 5 μm なし > 5 µm |
制限なし ≤ 3 µm |
制限なし < 3 µm
4 ≤ 4 µm |
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B : クラッド |
制限なし < 2 µm |
制限なし ≤ 25 µm なし > 25 µm |
制限なし ≤ 5 µm |
制限なし |
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C:接着 |
制限なし |
制限なし |
制限なし |
制限なし |
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D : コンタクト |
なし ≥ 10 µm µm |
制限なし |
制限なし |
制限なし |
IEC 61300-3-35:2022における最も注目すべき変更点は、「移動性のある異物を清掃したにもかかわらず、検査には不合格となったコネクタであっても、挿入損失(IL)および反射損失(RL)の光学性能テストに合格すれば使用できる」という文言が明記されたことです。言い換えれば、光学的性能が、外観検査の結果よりも優先されるようになったということです。
IEC 61300-3-35の改訂理由
IEC 61300-3-35:2022の変更は、MPOコネクタに対する推奨検査方法を提供し、検査や清掃のワークフローを効率化するとともに、不要で高額なケーブルや機器の交換を回避することを目的として実施されました。
以前の改訂版で課題となっていたのは、接触部(ゾーンD)にしか汚染がない場合でも、技術者が「検査 → 清掃 → 再検査」の無限ループに陥ることがあった点です。新たなワークフローでは、技術者はフェルール全体や接触部を一通り検査し、異物があれば清掃し、その後に重要なゾーンA(コア)およびゾーンB(クラッド)のみを検査すればよいとされ、作業が大幅に簡素化されました。
さらに、ファイバー端面に欠陥やキズがあったとしても、それが光信号を十分に妨げるものでなければ、必ずしも性能に悪影響を与えるとは限りません。要件が緩和され、挿入損失(IL)や反射損失(RL)といった光学性能が優先されるようになったことで、リンクが正常に機能していれば、ケーブルや機器を交換する必要はありません。これらの変更は、検査用テスト機器の再現性(リピート性)を高め、誤判定を回避するのにも役立ちます。
IEC 61300-3-35:2022ファイバー端面の検査とクリーニングのプロセスを簡素化します。 出典:国際電気標準会議、IEC 61300-3-35:2022 規格
IEC 61300-3-35の変更はあなたにとって何を意味しますか?
IEC 61300-3-35のこれらの変更により、ファイバー端面の検査や清掃作業はよりシンプルになり、「検査 → 清掃 → 再検査」という無限ループを避けながら、コネクタ、パッチ・コード、機器、その他の部品交換を減らすことで、時間とコストの削減が可能になります。
また、こうした変更について過度に心配する必要はありません。フルーク・ネットワークスのファイバー検査ツールはすべて、最新のIEC 61300-3-35に準拠した自動PASS/FAIL判定機能に対応済みです。さらに、ファイバー認証テスターによる光学性能テスト(挿入損失や反射損失)で合格していれば、検査結果よりも優先されます。ただし、検査に不合格となった場合、その情報はテスト結果に記録されるため、今後のトラブルシューティングに役立ちます。
検査が簡素化され、基準が一部緩和されたとはいえ、すべてのファイバー端面を推奨されたプロセスに従って検査し、必要に応じて清掃を行うことは依然として極めて重要です。フルーク・ネットワークスの光ファイバー・クリーニング・キットには、ウェット/ドライ両方の最適な清掃を行うためのすべてが揃っています。Quick Clean™ ツール(さまざまなコネクタに対応)、専用処方のファイバー・クリーニング溶液を使用した溶剤ペン、便利なクリーニング・キューブ/カードなどが含まれています。