サードパーティのネットワーク・ケーブル認証:知っておくべきこと

2024 年 9 月 18 日/一般、101学習、インストールとテスト

信頼あるメーカーは、自社のケーブル、パッチ・コード、接続ハードウェアに対して「サードパーティ認証済み」、「検証済み」、「認定リストに掲載済み」などの表記を採用しています。これは、メーカーが自社製品が業界標準に準拠していることを独立機関を通じて確認していることを示しています。これらの「認証」は具体的に何を意味するのでしょうか?そして、実際に設置された配線システムに対する「ケーブル認証」とは何が異なるのでしょうか?その違いを詳しく見ていきましょう。

サーバーラックが並ぶ暗い背景に、電子ファイルのシンボルが光りながら手のひらに抱かれている現代的な図解

ケーブル認証とは?

辞書では、「認証する」という用語を「ある資格を有している、または特定の基準を満たしていることを正式に認めること」と定義しています。ケーブルの認証試験もまさにそれに該当し、ANSI/TIA-568 や ISO/IEC 規格 11801 といった業界の配線標準で定められた性能パラメータに基づき、ケーブルが特定のカテゴリまたはクラスに準拠しているかどうかを判断します。

とはいえ、「ケーブル認証」という用語の解釈は、人によって異なることがあります。

  • • メーカーは、自社のケーブルが業界標準に準拠しており、認証済みであると売り込むことがあります。一方で、Intertek の ETL 認証のようなサードパーティによる認証は、ケーブルが業界の部品標準に適合していることを示すものです。

  • • 「ケーブル認証」は、設置済みリンクの性能を測定し、業界標準に適合しているかを確認する認証試験を指すこともあります。たとえば、設置されたカテゴリー 6A リンクが TIA-568 のパラメータ(長さ、挿入損失、リターン・ロス、近端クロストーク(NEXT)、パワーサム NEXT、等レベル遠端クロストーク(ELFEXT)、減衰クロストーク比(ACR)など)に準拠しているかどうかを判断します。

メーカーが「認証したケーブル」と「認証試験」との違いは、認証試験がケーブル配線の設置後に実施されるという点にあります。システム保証を取得するには、認証試験が必要です。これは、ケーブル配線が正しく施工されたことを確認する上でも不可欠です。認証試験では、すべてのリンクに対してテスト結果が記録されるため、後のトラブルシューティングに役立つほか、敷設業者が自身の施工実績を守る手段としても有効です。設置時点でケーブルが基準を満たしていたことを証明できます。

サードパーティ認証とは?

コンポーネントはファーストパーティ認証を受けることができ、これはメーカー自身が、その製品に対して自ら定めた基準を満たしていると自己宣言することを意味します。(それは信頼できるのでしょうか?)製品はセカンドパーティ認証を受けることもあります。通常、これは企業(たとえば、利用者や敷設業者)が独自の認証プログラムを作成し、そのプログラムで定められた基準を製品が満たしていることを示します。(それでも、やや疑わしい印象がしますね。)

これに対して、サードパーティ認証は、製品が独立した認定第三者機関によって、特定の業界における安全性、品質、または性能基準に適合していると認証されたことを示します。

製品がサードパーティ認証を受けている場合、認証機関は、業界で認められた規格や法規制に基づき、認定された試験所で製品の抜き取り試験を実施します。サードパーティによる試験は、メーカーにとって時間とコストのかかるプロセスですが、新製品の発売にあたっては、その費用や期間があらかじめ予算とスケジュールに組み込まれているものです。メーカーは、製品の認証を維持するために毎年の認証維持費を支払う必要があり、それに加えて継続的な基準適合を保証するための定期的な検査も受ける必要があります。

サードパーティ認証のメリットとは?

コストを抑えるために、メーカーはあらかじめ認証要件を考慮して製品を設計します。一部のサードパーティ認証機関は、設計段階での事前相談を提供しており、メーカーは製品が本番の認証試験に初回で合格するよう、これらのサービスを有料で利用することもあります。さらに、サードパーティ認証を受けた製品は、その後に設計変更や仕様変更があった場合、再試験および再認証が必要となります。つまり、それだけ時間とコストがかかることになります。

では、これほどの時間と費用をかけてまで、なぜメーカーはこのプロセスを選ぶのでしょうか?

まず第一に、そして最も重要なのは、特定の地域で製品を販売したり設置したりするには、法律や規定によってサードパーティ認証が義務付けられていることが多いという点です。この場合、メーカーには選択の余地がありません。それ以外の理由としては、サードパーティ認証を取得することで消費者の信頼を得られること、製品が市場で即座に受け入れられるようになること、そして製品の安全性と有効性を確保するために適切な手続きを踏んでいると示すことが挙げられます。

サードパーティ認証の種類

当業界において、ケーブル・コンポーネントは安全性および性能の両面でサードパーティ認証を受けています。安全性に関しては、製品は一般的に「認定リストに掲載済み」で、これは通常、管轄当局(AHJ)によって要求される要件です。対照的に、「検証済み」という表記は、電気的な伝送性能に関する認証であることを示します。

白黒で表示された2つの認証機関のロゴ:UL(左)とCSA(右)

 

北米においては、Underwriters Laboratories(UL Solutions)のリスト掲載により、ケーブル・コンポーネントが煙や炎の特性など、全米電気規程(NEC)に準拠した安全要件を満たしていることが保証されます。このリスト掲載により、ケーブルがライザー(CMR)またはプレナム(CMP)に分類されます。特に空調のためのプレナム(空気搬送)スペースに敷設されるケーブルは、火災の拡大や有毒煙の発生を抑える性能が求められます。同様に、CSA Group(旧称、カナダ規格協会)のリスト掲載は、製品がカナダ電気規程(CEC)に準拠していることを示します。CE および UL のリスト掲載は、実質的に同等の効力を持つとされています。また、“CSA-US” または “c-UL”と表示されている場合、その製品が米国およびカナダの両方の規格に準拠していることを示します。

欧州連合では、健康・安全・環境に関するすべての要件を満たしていることを示すために、CE リスト掲載(CEマーク)が義務付けられています。その他の地域でも UL、CSA、CE の認証が認知されていますが、国によっては固有の安全認証マークが必要とされる場合もあります。たとえば、日本では PSE マーク、インドネシアでは SNI マークがそれに該当します。

当業界で一般的なもう一つのケーブル認証として、Intertek の ETL 認証があります。Intertek は、UL と同様に国家認定試験機関(NRTL)と見なされており、製品が最低限の安全基準を満たしていることを示すための「リスト掲載」を行う際には、UL の規格に基づいた試験が実施されます。両者(UL と ETL)のリスト掲載の実質的な違いは、試験を行う検査室が異なる点だけです。

また、製品は品質や性能に関して ETL による「検証」を受けることもできます。これは、製品が ANSI/TIA、ISO/IEC、EN、IEEE などの適切な性能規格に準拠していることを、第三者によって試験・確認されたことを示します。リスト掲載とは異なり、検証は法的に義務付けられているものではありません。なぜなら、電気的な伝送性能は人体への安全に直接的に影響を与えるものではないからです。では、検証の意味は何かというと、設置する製品が顧客のネットワーク・アプリケーションに必要な性能をしっかりと提供できるという安心感をもたらすことです。

フルーク・ネットワークスはケーブルを認証しているか?

Google や Amazon で検索すると、「Fluke Certified(フルーク認証済み)」とラベル表示されたケーブルやパッチ・コードが多数見つかります。ただし、ここで明確にしておきます。フルーク・ネットワークスは、ケーブル・コンポーネントの認証や推奨は一切行っていません。

当社は、TIA、ISO/IEC、IEEE の各規格に基づいて、設置済みのケーブル・システムを認証するためのテスター機器を製造しています。また、サードパーティ認証機関やメーカーが自社のラボで使用するための試験機器も提供しています。

ただし、メーカーとして当社が他社製品の部品を認証することは決してありません。当社のテスター機器そのものは、第三者認証を受けており、安全性のためにリスト掲載され、性能についても検証済みです。実際、フルーク・ネットワークスは、IEC レベル V の精度および ANSI/TIA-1152-A レベル IIIe および 2G の認証を ETL から初めて取得したテスト機器メーカーです。そのことが、当社のテスターが信頼性の高いケーブル認証を可能にすることを証明しています。

当社はケーブル・コンポ―ネントの認証を行っていないため、製品に「Fluke Certified(フルーク認証済み)」とラベルを貼っているベンダーが存在する場合、それはおそらくフルーク製のテスターを使用して試験を行ったという意味にすぎません。当社の機器を使用してテストしてくださるのは喜ばしいことですが、このような表示は誤解を招く表現であり、虚偽広告にあたります。そのため、こうした表記を確認した際には、表現の修正を求める対応を行っています。

認証試験レポートの重要性

もし、見慣れないベンダーが「フルーク認証済み」と(誤って)主張していたり、単に「フルーク・ネットワークスのテスターを使用して試験した」と述べているだけであれば、実際のフルークによる試験レポートの提出を求めて確認することをお勧めします。PDF レポートではなく、ネイティブの LinkWare™(FLW)ファイルを要求することをお勧めします。セキュリティの理由上、FLW ファイルは暗号化されており、編集や改ざんができません。

たとえば、フルーク・ネットワークスの DSX CableAnalyzer™ シリーズの認証テスターは、すべてのリンク・ペアに対して各パラメータの数値を詳細に記録し、結果をトレース形式でグラフィカルに表示します。LinkWare テスト・レポートには、選択されたテスト・リミット、使用されたフルーク・テスターの機種名、テスターの最終校正日、およびソフトウェア・バージョンも表示されます。

ベンダーが LinkWare のテスト・レポートを提供してきた場合は、そのレポートの読み方を理解し、どのような種類の試験が行われたのかを把握し、その結果が主張内容と整合しているかを慎重に確認することが重要です。ベンダーが「PASS(合格)」と表示されたテストレポートを提供してきたからといって、そのケーブルが業界標準に準拠している、あるいは設置後もその準拠が維持されるとは限りません。提供されたレポートが実際に購入したケーブルのものかどうかは、最終的にベンダーを信頼するしかありません。

たとえば、ベンダーが 1000 フィート巻きのケーブルに対してシングルエンドの簡易テストを実施していた場合、それによって近端クロストーク(NEXT)やリターン・ロスは分かっても、挿入損失や遠端クロストークを判断することはできません。だからこそ、設置後にすべてのリンクを認証試験することが極めて重要なのです。これこそが、ベンダー保証を取得する唯一の方法でもあります。

ケーブル認定およびテスト

メーカー保証の取得や、設置済みケーブル・システムが業界標準に準拠していることを確認するには、認証テスターによる認証試験が唯一の方法です。フルーク・ネットワークスの DSX CableAnalyzer メタル・ケーブル認証テスターや、CertiFiber® Pro(Tier 1 ファイバー認証用)、OptiFiber® Pro OTDR(Tier 2 ファイバー認証用)など、当社のファイバー認証の製品群をぜひお試しください。

また、基本的な導通チェックを行う「検証テスト」や、ケーブルが特定の技術やアプリケーション(例:PoE、10GBASE-T)をサポートできるかを判断する「適格性テスト」に対応したテスターもご用意しています。これらのツールは主に、既存のケーブルシステムに対して、ケーブル変更後の確認、新しいデバイスの性能保証、そしてネットワーク障害のトラブルシューティングなどに活用されます。フルーク・ネットワークス LinkIQ™ は、設置済みのケーブル・システムの検証および適格性の確認を行える、使いやすいネットワーク・テスターです。

テスト・ツールによっては一部の機能が重複していることもありますが、検証、適格性テスト、人称の違いと、それぞれをいつ実施すべきかを理解しておくことで、用途に合った最適なツールを選ぶことができます。