光ファイバーとは?ガイド
2024 年 3 月 20 日 / 一般、 101学習
映画のストリーミング、電話の通話、内視鏡検査、これらは一見まったく異なる体験のように思えるかもしれませんが、共通する重要な技術基盤が存在します。それらは、目に見えない光ファイバーのネットワークによってつながれています。このガイドでは、この強力なテクノロジーの仕組みを詳しくご紹介します。光ファイバーが何に使われているのか、光ファイバー・ケーブルがどのように機能するのか、そしてそのメリットについて学ぶことができます。
光ファイバーとは?
光ファイバー技術とは、ガラスの細い繊維を通して光のパルスとしてデータを送信する通信方式です。この方法により、長距離にわたって高速かつ低損失のデータ伝送が可能となり、現代のデータネットワーク、通信、インターネットにとって不可欠な存在となっています。
光ファイバーの用途は?
ネットワーク・アプリケーションの拡大とともに、組織がこれまで以上に多くのデータ(画像、音声、映像など)を収集するようになったことで、より大容量かつ高速なデータ伝送への需要は現在も増え続けています。これは、より高い帯域幅をサポートできる配線が求められることを意味します。こうしたニーズに応える配線として、光ファイバー・インフラはデータ通信ネットワークにおける主流の選択肢となりつつあります。
光ファイバーは何でできている?
光ファイバー・ケーブルは、人間の髪の毛ほどの細さのガラス繊維で構成されています。
光ファイバーは、コア(芯線)、クラッド層、外側の保護被覆(バッファ)と呼ばれる層で構成されています。
- • 光ファイバー・ケーブルの中心部には、超高純度の極細ガラス繊維で構成されたコアがあります。LED やレーザーなどの送信機から発信された光信号は、このコアに送り込まれます。
- • 光ファイバーケーブルのコアは、「クラッド」と呼ばれるガラスの層に包まれており、被覆の役割を果たします。光をコア内部に反射させ、信号のパワーを維持するのに役立ちます。
- • 光ファイバー・ケーブルの最外層(バッファ)は、通常プラスチック素材で構成されています。この層は、湿気や物理的な損傷からファイバーを保護し、コア内のガラス繊維の強度を保つ役割を果たします。
こうした機能的に特化した複数の層の組み合わせによって、光はケーブル・ネットワーク内をほとんど妨げられることなく伝送されます。そして、リンクの終端では受信機がその光信号を受け取ります。
光ファイバーの目的とは?
光ファイバー技術の主な目的は、大量のデータを高速かつ高信頼で伝送することです。この技術は、私たちのデジタル社会を支える広範で相互接続されたネットワークの基盤を支えるうえで不可欠であり、あらゆる場所で、いつでも効率的な通信と情報アクセスを可能にしています。
光ファイバーケーブルの長所と短所
光ファイバー・ケーブルには、メタル線ケーブルに比べて数多くの利点があります。これには、より大きな帯域幅、高速通信、そして電磁干渉に対する耐性などが含まれます。
- • 超高速通信: 速いとはどのくらい?光ファイバー・ケーブルは、最大で 800 Gbps という高速でデータを伝送することが可能です(現在のデータセンターでの実用上限)。今日では、ブロードバンド・インターネット・サービスにも光ファイバーが活用されており、数百万件の家庭や企業に最速クラスのネット接続を提供しています。
- • より大きな帯域幅: 光ファイバーは、広範な光の周波数帯域を使用できるため、より多くのデータを高速で転送することが可能です。たとえば、1 本の光ファイバー接続で HD 映画 1 本分のデータを 0.1 秒未満で転送できます。一方、一般的なオフィスのメタル線ネットワークでは、同じデータ転送に約 1 分かかります。
- • データ損失が少ない:損失または減衰は、配線やネットワークの性能指標の一つです。光ファイバーは、電源ケーブルや無線信号、さらには太陽フレアによる電磁干渉の影響を受けにくいため、データ損失が少ないという特長があります。
- • 腐食の心配がない:光ファイバー・ケーブルは非金属材料で構成されているため、接続部が腐食する心配がありません。ただし、ホコリや湿気による汚染には弱いため、定期的な検査と清掃によって性能を維持する必要があります。
- • 長距離伝送に対応: メタル線ケーブルは、信号を減衰させずに伝送できる距離が限られており、リピーターなしでは約 100 メートル程度が限界です。一方、光ファイバーは 100 キロメートルにわたって信号を伝送でき、しかも強度の低下がほとんどありません。
光ファイバーには、いくつかの課題も存在します:ケーブル自体のコストは銅と競合できますが、関連する電子機器の価格は比較的高価です。光ファイバーの施工・保守・修理には専門的な工具や技術、安全ルールが必要です。ただし、これらは適切な機器、トレーニング、サポート体制を整えることで十分に対応可能です。
光ファイバーが使用される分野は?
高速インターネットの提供から、スマートシティの通信インフラに至るまで、光ファイバーは現代において最も多用途な技術の一つといえるでしょう。以下は、光ファイバーが活用されている代表的な分野です。
-
• 通信・インターネット分野
光ファイバーは、ブロードバンド・インターネット接続において重要な役割を果たしています。ネットワークやデータセンター同士を接続し、インターネットのバックボーンとしても機能しています。また、クラウド・コンピューティングのプロバイダーも、光ファイバー・インフラに大きく依存しています。 -
• 医療分野
光ファイバーは、高解像度の医療用画像処理に理想的な技術です。内視鏡検査、レーザー手術光干渉断層撮影、光線力学療法のような医療技術で活用されています。 -
• 交通
インテリジェント交通システム(ITS)では、光ファイバーを活用してリアルタイムのデータ監視を行っています。これにより、交通の流れの制御、料金所システムや駐車場の管理、鉄道レールの状態監視など、さまざまな用途に対応することができます。さらに、光ファイバーの使用は実用的な分野だけにとどまりません。たとえば、メタル線よりも軽量かつ高速な通信が可能なことから、航空機内のエンターテインメント・システムにも使用されています。 -
• 軍事分野
光ファイバーは、電磁干渉や盗聴、敵による妨害に強いという特性から、セキュアな通信インフラとして軍事通信でも使用されています。 -
• 産業オートメーション
高出力のモーターやヒーターなどが発する強いノイズが存在する環境では、光ファイバーによるデータ・制御信号の伝送が有効です。また、工場や精製所のような施設は広大な敷地を持つことが多く、光ファイバーは長距離にわたるネットワーク接続を可能にし、機器の監視やプロセスの制御にも役立っています。光ファイバーは電気を通さないため、長距離の配線においてケーブルの両端で接地電位が異なる場合でも安全に使用できます。この特性は、爆発防止が求められる環境(例:穀物サイロや鉱山など)において極めて重要です。こうした環境では、わずかな電気的スパークが大惨事を引き起こす可能性があります。 -
• スマート企業、キャンパス、スマート・シティ
光ファイバー技術は、スマート・シティ、大規模なオフィス、キャンパス環境における高速接続を実現する重要な要素です。特に、ビル間やフロア間のデータ伝送、サービスの監視、重要インフラや高リスク領域での安全管理など、大量のデータを長距離にわたって集約・伝送するバックボーン技術として欠かせません。
光ファイバーの種類
光ファイバーには、マルチモードとシングルモードの2 つの種類があります。両者は主にコア径とクラッド径の違いによって区別されます。
- • シングルモード・ファイバー: 一般的にコア径は約 9 µm、クラッド径は 125 µm の細い構造をしています。1 種類の光モードのみが伝送される構造になっています。光が直線状に集中して進むため、信号損失が少なく、長距離・高帯域の通信に適しています。
- • マルチモード・ファイバー:コア径は一般に 50 µm および 62.5 µm、クラッド径は 125 µm の 2 つのサイズがあります。コア径が大きいため、マルチモード・ファイバーは複数の光モードを同時に伝送することができます。マルチモード光ファイバー・ケーブルは、企業ネットワークやデータセンター内など、比較的短距離での通信に適しています。コア径が大きいため、ファイバー同士の芯合わせがしやすく、施工も比較的簡単です。
シングルモード・ファイバー |
マルチモード・ファイバー |
|
コア径 |
9 µm |
50 µm(ステップ・インデックス) |
62.5 µm(グレーデッド・インデックス) |
||
クラッド径 |
125 µm |
125 µm |
理想的な用途: |
高性能、 |
短距離通信向け、 |
光ファイバーの将来
光ファイバー技術の将来は非常に明るく、さらなる進化に向けた研究開発が世界中で続けられています。
たとえば、データ伝送速度は約 5 年ごとに 2 倍のペースで進化しており、これは下記の Ethernet Alliance によるグラフにも表れています。今後の大きなトレンドのひとつは、既存の光ファイバー/ケーブルでより高いデータレートを実現することです。これにより、4K / 8K 映像の配信、仮想現実(VR)アプリケーション、その他のデータ集約型テクノロジーのような大容量データ処理を要する技術の普及が加速します。
グラフは Ethernet Alliance の許可を得て掲載しています。
光ファイバーのもう一つの重要なトレンドは、5G ネットワークの需要に対応するための活用です。これにより、特にデータ需要の高い地域において、より高速かつ信頼性の高いワイヤレス接続が実現されます。光ファイバーは、5G、5.5G、6G、さらにその先の通信世代を支えるバックボーンとなるでしょう。
さらに、光ファイバー部品の小型化や柔軟なファイバーの開発が進むことで、モノのインターネット(IoT)機器への新たな応用も可能になります。
高速なデータ伝送を可能にする技術としての光ファイバーの重要性はすでに明確ですが、この技術にはそれ以上の可能性がまだまだ広がっています。光ファイバーの潜在力をさらに発展させることで、通信の高速化だけでなく、環境モニタリングや、相互接続された世界における安全性の向上といった、まったく新しい可能性を切り拓くことができるのです。