産業用イーサネットの現状

2018 年 10 月 18 日 / 一般、標準および認証、産業用ネットワーク

イーサネットは本質的に信頼性、性能、相互運用性に優れているため、オートメーション・システムや制御システムの通信プロトコルとして工場で広く使用されています。今年、産業用イーサネットは、分離された専用の配線設備を複数必要とする Fieldbus プロトコルを市場シェアで抜きました。 

産業環境のニーズに対応するために、産業用イーサネットは、イーサネット・プロトコルに埋め込まれた特殊な産業用プロトコルを使用して、必要な時刻に正しい情報を正確に送受信して特定の動作を実行します。これらのプロトコル、および産業用イーサネット・ネットワークと商用イーサネット LAN 環境との違いについて詳しく説明します。

4 つの主なプロトコル

産業通信はルーティング、制御、センサーの各レベルで行われ、それぞれで異なるレベルのリアルタイムの情報転送、衝突検出、決定性(主に、2 つのノード間の経路を事前に決定します)が必要になります。工場では、さまざまな通信要件に対応するための産業用イーサネット・プロトコルが複数使用されますが、主なプロトコルは Modbus TCP/IP、EtherCat、EtherNet/IP、および Profinet の 4 つです。

Modbus TCP/IP は最初に導入された産業用イーサネット・プロトコルです。基本的には、イーサネット・トランスポート層プロトコル内に圧縮された従来の Modbus 通信であり、制御機器間で個別データの転送を行います。簡易なマスタ・スレーブ通信を使用しており、「スレーブ」ノードは「マスター」ノードからの要求がない限りデータを送信しませんが、リアルタイム・プロトコルとは見なされません。

2003年に導入された EtherCAT は、マスター/スレーブ構成でオートメーション・システムにリアルタム通信を提供する産業用イーサネット・プロトコルです。EtherCAT の重要な要素は「オン・ザ・フライ」と呼ばれる通信です。この方式では、ネットワークに接続されたすべてのスレーブは、データ・パケットから必要な関連情報のみを読み取り、下り方向の伝送時にデータをフレームに書き込みます。  

2000年に初めて公開された Ethernet/IP は、広く使用されるアプリケーション層産業用イーサネット・プロトコルです。ODVA (Open Device Vendors Association) によってサポートされ、対応製品は主に Rockwell Automation 社が提供しています。イーサネット規格に完全に準拠した唯一の産業用イーサネット・プロトコルであり、標準のイーサネット物理層、データ・リンク層、ネットワーク層およびトランスポート層を使用します。このプロトコルは標準のイーサネット・スイッチングを使用するため、無制限の数のノードをサポートできますが、遅延をなくし、リアルタイム通信を行うために、範囲が制限されます。

もう 1 つの主要なプロトコルである Profinet は(Siemens や GE 製コントローラーに組み込まれていることが主な理由です)、Siemens 社と Profibus のユーザー組織加盟企業によって開発されたアプリケーション・プロトコルです。Profinet は、基本的には Profibus I/O コントローラー通信をイーサネットに拡張した通信規格で、機器に組み込まれた特殊スイッチを使用します。

ケーブル設備の特性

これらの産業用イーサネット・ネットワークに対応したケーブル設備は、商用イーサネット LAN と比べて重要な違いがいくつかあります。まず、産業用イーサネットの速度は一般的に100Mb/s です。LAN 環境で見られるギガビットや高帯域幅は使用されません。これは、産業ネットワークで制御/オートメーション情報を送信するために必要な帯域量は、YouTube 動画をダウンロードする場合と比べてほんのわずかであるためです。

産業環境では、振動、液体、埃、薬品、電磁干渉など、さまざまは過酷な条件に耐えるケーブルと接続性が要求されるため、オフィス LAN で使われる部品よりも堅牢に構成されています。たとえば、カテゴリー 5 またはカテゴリー 5e 性能しか必要なくても、産業用ケーブルには、高温に対応した大きなケージ・サイズ(通常 22AWG)、ノイズを防止するシールド構造、適応性の高い撚線、特殊な外被材料(薬品、油、磨耗に強いポリウレタンなど)が用いられることがよくあります。また、腐食を防止するために被覆導体が使用されることもあります。こうした特性により、産業用イーサネット・ケーブルは通常の LAN ケーブルに比べてコストが大幅に高くなります。

同様に、産業用イーサネットで使用するコネクターもより堅牢でなければなりません。産業環境向けに設計された耐久性の高い RJ45 コネクターには、埃や湿気の浸入を防ぐ密閉型や、耐薬品性素材が使用されているものもありますが、産業用イーサネットでは、振動や衝撃下でも安定した接続を維持する小型の12mmねじ止め式 M12 丸型コネクターがより広く使用されています。また、M12 コネクターは幅広い侵入保護機能を備えているため高圧洗浄でき、耐食性に優れています。 

さまざまな機械接続に対応するためにストレートおよびアングル構造で提供されており、最も一般的な M12 コネクターは 4 ピンまたは 8 ピンです。4 ピンは、産業用イーサネット・アプリケーションで一般的な 100 Mb/s 速度に対応します。一方、伝送に 4 ペアすべてを使用するギガビット・イーサネットでは 8 ピンが必要になります(これについては以前取り上げました)。PoE に関しては、4 ピン M12 は、同じペアで直流電源とデータを同時に送信するタイプ 1 のみに対応しており、タイプ 2 以上では 8 ピン M12 が必要です。また、衝撃や振動が発生する環境下で、機械にケーブルの一端のみを接続する必要がある場合は、M12-RJ45 ケーブル・アセンブリーも一般的に使用されます。 

産業用イーサネットの利用が増え続けるにつれ、これに対応する規格は今後も標準化団体によって策定されていくでしょう。フルーク・ネットワークスでは、これらのシステムのテストと認証方法について、皆さんに最新情報をお伝えしていきます。その他の産業用イーサネットのリソースを見る

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